羽賀翔一

羽賀 翔一（はが しょういち）は、1986年に生まれた日本の漫画家です。クリエーターのエージェンシーである株式会社コルクに所属し、精力的に創作活動を行っています。

茨城県立土浦第二高等学校を経て学習院大学文学部を卒業した羽賀氏は、大学在学中は国語の教師になることを目指していました。しかし、その後の進路を大きく変えることになります。2010年に、講談社が主催する漫画賞「モーニング」第27回MANGA OPENにおいて奨励賞を受賞したことが、漫画家としてのキャリアを歩み始める決定的なきっかけとなりました。これを機に、担当編集者の勧めもあり、人気漫画『宇宙兄弟』の作者である小山宙哉氏、そしてその師にあたるこしのりょう氏のもとでアシスタントとして研鑽を積みました。

漫画家としての実績は、MANGA OPEN受賞に留まりません。同じく2010年には、講談社主催の第57回ちばてつや賞・一般部門でも佳作を受賞しており、この頃からその才能は高く評価されていました。

プロデビュー後、2011年には初めての連載作品となる『ケシゴムライフ』を「モーニング」誌上で短期集中連載として発表します。同時期には、『宇宙兄弟』の公式ムック本『We are 宇宙兄弟』においても短編漫画を連載するなど、活動の幅を広げていきました。

羽賀氏のユニークな活動の一つとして、企業文化や働く人々を描いた漫画の制作があります。2013年からは、面白法人として知られる株式会社カヤックの社内エピソードを題材にした『ならべカヤック』や『追いぬきルーキー』を手掛け、2014年には『コットンマイウェイ』『夢みる場所へ』、2015年には『気分は上へまいります』と継続的に制作しました。また、自身が所属する株式会社コルクの日常をエッセイ風に描いた『今日のコルク』の連載も2013年に開始しており、社内外の様々な視点から人間模様や仕事のあり方を描き出しています。

2014年には、デビュー作を含む短編集がKindle連載として販売開始され、同年には初の単行本となる『ケシゴムライフ／羽賀翔一短編集』が徳間書店より刊行されました。さらに、土木業界をテーマにした異色の作品『ダムの日』が、プレジデント社発行の「PRESIDENT NEXT」で連載を開始するなど、多岐にわたる分野に題材を求めています。

そして、羽賀氏の漫画家人生における最大の転機となったのが、2017年に発表された『漫画 君たちはどう生きるか』です。これは、評論家であり編集者でもあった吉野源三郎が1937年に発表した同名の古典的な教養小説を原作として漫画化した作品です。この漫画版は、原作が持つ問いかけやメッセージを現代にも通じる形で鮮やかに描き出し、幅広い世代からの共感を得て大ベストセラーとなりました。この成功により、羽賀翔一の名は多くの人々に知られることとなります。

漫画作品以外にも、表現者として多様な活動を行っています。2016年にはロックバンド7!!のコンセプトアルバム『アニップス』のジャケットイラストを担当しました。また、2019年にはサントリー「BOSS×スパリゾートハワイアンズ」のコラボレーションCMにおいて、福島県限定で放映されたアニメーションのキャラクターデザインとポスターイラストを手掛けるなど、広告分野でもその才能を発揮しています。

主な作品には、『ケシゴムライフ／羽賀翔一短編集』、『ダムの日』、『今日のコルク〜新人マンガ家のスケッチブック〜』、そして社会現象ともなった『漫画・君たちはどう生きるか』があります。さらに、『昼間のパパは光ってる』や、児童書である齋藤孝氏著『友だちってなんだろう？』の装丁画も手掛けています。

教師を目指していた学生時代から一転、漫画家として独自の道を切り拓いた羽賀翔一氏は、文学作品の漫画化から企業文化、特定の業界、日常のエッセイまで、幅広いテーマを扱いながら精力的に活動を続けています。その表現力と着眼点は、今後の作品にも期待を抱かせます。

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