老中奉書

老中奉書について

老中奉書（ろうじゅうほうしょ）は、日本の江戸時代に特有の文書形式であり、江戸幕府の老中が将軍からの命令や指示を伝えるために発行した重要な伝達手段です。この文書は、老中が行う奉書加判にとって大変重要であったことから、老中の主要な職務の一つと位置付けられています。ただし、大老や大政参与といった一部の高位の職官は、この加判からは免除されることがあります。さらに、老中格の老中は、実際には署名を行わないこともあります。

老中奉書の形式

老中奉書には、連名で発行する連署奉書と、単独で発行される単独奉書の2つの形式があります。連署奉書は、主に大名や遠国奉行への命令を伝える際に利用され、複数の老中が署名を行います。一方、単独奉書は、例えば将軍家への贈り物の受け取りの確認など、特定の目的に応じて発行されます。

老中奉書が改定されたのは寛文4年（1664年）のことで、このタイミングで小事に関する奉書が老中一判となることが定められました。宛名には「殿」という敬称が用いられ、発行日は月日のみが記されますが、特定の文書、例えば城の修築許可証には年月日が記載されることがあります。また、差出人である老中の署名は、序列が低い者から順に行われるのが慣例となっています。

私信としての使い方

老中が大名や旗本らに宛てて私信を発信することもありますが、その際の敬称は「様」となり、一般の奉書との区別がつきやすいです。老中奉書の内容は多岐にわたり、将軍家への機嫌伺いや病気見舞いの挨拶、拝領御礼、慶賀祝賀、さらには八朔祝儀、社参供奉、参勤帰国や養子縁組の許可などが含まれていました。

早い時期の江戸時代には、異国船やキリシタンに関連する特有の文書が散見されることが特徴であり、対馬宗家文書には韓国との関係に関する文書が多く残されています。

残存文書と研究

老中奉書は、比較的多くの文書が現存していることでも知られています。特に、対馬宗家文書や土佐国山内家文書において、老中奉書が多く確認されています。これらの文書の研究は、江戸時代の政治体制や社会状況を理解するために重要な資料となっています。特に、髙橋修や大野瑞男による研究は、老中奉書の文書学的な分析や制度に関する考察がなされており、当時の歴史的背景や意義を考える上で貴重な情報源です。

老中奉書は、歴史的な資料であると同時に、当時の政治的・社会的状況を知る上で欠かせない文書形式であり、今後もさらなる研究が期待されます。

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