大政参与

大政参与（たいせいさんよ）

大政参与は、江戸幕府における重要な職務の一つであり、幕政の大きな課題に臨時的に関与し主導する役割を担った。大政参与は、幕府の中で非常に重要な職制として位置づけられており、その成り立ちや性質には深い歴史的背景が存在する。

概要

この職制は寛永9年（1632年）1月30日、松平忠明と井伊直孝の二名が幕政への参加を命じられたことから始まった。これは、徳川秀忠から後継者である3代将軍徳川家光への後見を任され、大御所としての役割を果たすための措置であった。この時期、家光には嫡男が存在しなかったため、幕府内での二元的な政治構造が成立できず、幕閣の再編成が求められる状況にあった。

大政参与は非常勤でありながら幕府に在府し、特に重大な案件に関与して決定する役割を果たしていた。月番制や評定所の出座、老中奉書の連判は免除されていたが、特定の重大事に関しては評定所に出座することもあった。

寛永15年（1638年）11月7日には、酒井忠勝と土井利勝が大老に任命され、彼らもまた類似の免除を受けて幕政に参加している。この経緯から、大政参与と大老は同一視されることが多かったが、後の文献ではそれぞれの役割が明確に区別されるようになった。特に『柳営補任』では、大政参与は「執事職」とされ大老は「元老」として名付けられている。

職務の違いとその性質

両職の職務の違いは明白である。大政参与は将軍の後見役として、幕政全般にわたって関与するが、殿中での儀式や将軍家の法事の手配なども担当していた。これに対して大老は、将軍の意向を受けつつ財政や民政といった時の重要な問題を掌握する職務であった。言い換えれば、大政参与は将軍の代理を務め、大老は将軍の家臣としての立場を強く意識している。

大政参与の資格としては、少なくとも10万石の石高を持ち、官位は少将または中将であることが求められていた。老中から就任する場合もあれば、無役の親藩や譜代大名から直接就任することもあった。具体的な例としては、堀田正盛や稲葉正則が大政参与に就任し、歴代にわたってこの職に就いた人物が数多く存在する。

4代将軍家綱から5代将軍綱吉の治世には、両職が頻繁に設けられ、特に酒井忠清が大老に在任中の延宝8年（1680年）には、稲葉正則が大政参与に就任している。このように、歴史を通じて大政参与と大老の役割は密接に関連しており、特に元禄以降は「大老」と「御太老」としての名称が主流となり、両者の地位が一層明確にされるようになった。

幕末期においても、徳川斉昭や松平容保が大政参与に任命されるなど、この職制は幕府内で重要な役割を果たす位置を保持していた。大政参与は、幕府の政治に関与する重要な存在であり、その役割は時代を超えて持続してきたことが分かる。

参考文献

• - 福田千鶴『人物叢書 酒井忠清』吉川弘文館、2000年。
• - 下重清『幕閣譜代藩の政治構造』岩田書院、2006年。
• - 山上降太『元禄・正徳期の御大老 井伊直興と直該』郁朋社、2009年。

関連項目

• - 大老
• - 政事総裁職 - 幕末の職制
• - 参与

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