耳切り

耳切り・耳削ぎの歴史

耳切り（耳削ぎ、みみきり）とは、人間の耳を切り取る行為を指します。主に、刑罰や戦の際に行われることがありました。この行為には二つの主要な目的があります。一つは、刑罰としての側面で、一部の国や文化では、罪を犯した者に対して耳を切り取ることが制裁として行われました。もう一つは、戦争において、敵を討ち取った証として耳を切り取る行為です。

女性に対する処罰としての側面

特に中世・近世の日本において、耳切りははなそぎや髪切りとともに、女性に対する厳しい処罰として知られていました。このような処罰が選ばれた理由の一つには、女性に対する死刑が忌避されていたことが挙げられます。耳や鼻を失うことは、その人を非人とみなす文化的な価値観が存在しており、共同体から排除されることに繋がりました。このため、耳切りやはなそぎは、実質的な死に至ることは避けつつも、効果的な制裁とされました。

男性に対しても耳切りは行われ、死刑の前に耳や鼻を切り取る形で制裁を果たしていました。これは、死刑を避けるのではなく、一旦「人に非ざる者」とし、以後に死刑を実行するという形式の変化を加えることで、実質的な制裁の手段となっていました。

戦国時代と耳切り

戦国時代には、戦の際に討ち取った敵の首の代わりに耳を切ることが行われるようになりました。日本の文禄・慶長の役の際にも、耳切りが行われた記録があります。江戸時代に入ると、このような刑罰は形式上は廃止されるものの、徳川吉宗の将軍時代に公式に禁止されるまでは続いていました。

それでも、姦通などの理由から、私的に耳切りが行われるケースもあったため、完全に消え去ったわけではありません。

歴史的記録と事件

17世紀に編纂された『寛永諸家系図伝』の中では、平安時代において平候（平安時代の武士）が、敵として知られた安倍貞任や藤原経清を討った際に、その首を京都へ送ったり、耳を路上にさらしたという記録が残されています。このことは、耳切りが首と同じように戦の証としての役割も果たしていたことを示しています。

平安時代の他の事例としては、藤原純友に関わる事件があります。

さらに、日清戦争（1894年）においては、日本兵の死体が耳を切り取られていたという証拠があり、このことは後の旅順虐殺事件とも関連していると言われています。戦争の犠牲者たちが、耳切りの対象になっていたことは、戦場の悲惨さや、残虐な行為が行われる一因となりました。

結論

耳切りは、歴史的に見ても、文化的、社会的に多くの意味合いを持った行為でした。その影響は、単に物理的な制裁にとどまらず、女性に対する社会的な制約や戦争の象徴的な行為としても、大きな意味を持っていました。現代においては、このような行為がどのように理解され、記憶されているのかを考えることも重要です。

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