耳掻き

耳掻き（みみかき）

耳掻きは、耳の穴（外耳道）を掃除するために使用される道具、およびその行為を指します。先端がヘラ状になった細長い棒状のものが一般的で、耳の穴の内側をこすって耳垢を除去します。一般的には耳掃除とも呼ばれます。

概要

東アジア人に多い乾燥した耳垢の除去に適しており、欧米人に多い粘性の耳垢の除去にはあまり向いていません。そのため、欧米ではあまり普及していません。

日本の耳掻きには、ヘラ状の反対側に梵天と呼ばれる水鳥の羽毛や装飾がついていることが多いです。また、料理の際に調味料の分量を調整する際に「耳掻き一杯」という表現が用いられることがあります。これは「ほんの少し」という意味の比喩表現です。

耳掃除を好む人は、迷走神経が集中する外耳道を刺激することで快感を得ることがあります。しかし、約2割の人は同様の行為で咳が出ることが知られています。

歴史

日本

日本における最初の耳掻きは、簪（かんざし）に由来するとされています。簪の端をヘラ状にしたものが耳掻きの始まりで、江戸時代に高橋図南によって発明されました。奈良時代の長屋王邸跡から木の耳掻きが出土していますが、これは留め釘である可能性も指摘されています。

江戸時代には、耳掻きを専門とする「耳垢取」という職業が存在していました。これは、山東京伝の『骨董集』や落語にも登場します。

恋人や親子間で行われることもあり、愛情表現の一つとして捉えられています。

海外

世界的に見ると、耳掻きに関する記録は少ないです。ヨーロッパでは、ローマ時代の遺跡から耳掻きが出土していますが、研究が進んでいないため、起源を遡ることは困難です。中国では、紀元前13世紀の商代の遺跡から、玉（翡翠）で作られた耳掻きが出土しています。

18世紀頃のヨーロッパで作られた銀製の耳掻きが、骨董品として市場に出回ることがあります。

健康上の注意点

耳かきの頻度

耳掻きを頻繁に行うと、外耳道が炎症を起こすことがあります。特に幼児に対しては、耳掻きを使用せず、綿棒を使用することが推奨されます。

医学的には、耳垢には雑菌の繁殖を抑え、皮膚を保護する役割があります。通常、耳垢は自然に排出されるため、耳掻きは月に1～2度、2～3分程度で十分です。ただし、屋外での作業やスポーツで汗や埃が溜まりやすい場合、または耳垢の臭いが気になる場合は、週1回程度の耳掃除が推奨されることもあります。

日本人の約7割が週に1回以上耳掃除をしていますが、頻度が高すぎるため、通院が必要になるケースも見られます。

耳垢栓塞

耳垢が自然に排出されず、外耳道を塞いでしまう状態を耳垢栓塞といいます。耳掻きで耳垢を奥に押し込んでしまうことが原因で発生することがあります。耳垢が鼓膜に付着すると、難聴の原因になったり、耳に水が入った際に外耳炎を引き起こすことがあります。耳垢や耳垢栓塞は、耳鼻咽喉科で除去してもらうのが安全です。

注意点

耳掻き中に、ペットや子供がぶつかって鼓膜を傷つける事故も少なくありません。注意して行いましょう。

イヤーキャンドル

イヤーキャンドルは、円錐形に丸めた紙状の蝋を耳に入れ、火を灯して耳垢を取る方法です。燃焼によって耳内の空気を吸引し、耳垢を取り除くとうたわれていますが、研究により耳垢除去効果は科学的に否定されています。現在では、アロマセラピーとして販売されていますが、溶けた蝋が外耳道に滴り落ちて火傷を負う事故も報告されています。

人間以外の動物の耳掻き

人間以外の動物も、健康であれば耳垢は自然に排出されます。犬や猫などの場合は、耳の入り口付近を洗浄液を含ませたコットンで拭く程度で十分です。炎症がある場合は、獣医師による処置が必要です。

耳掻きの名を持つ生物

ミミカキグサ：食虫植物の一種。果実の形が由来。
ミミカキタケ（カメムシタケ）：冬虫夏草の一種。子実体の形が由来。

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