聖アンデレの磔刑 (カラヴァッジョ)

カラヴァッジョの傑作「聖アンデレの磔刑」

イタリアバロック絵画の巨匠、カラヴァッジョによって1607年に描かれた「聖アンデレの磔刑」（伊: Crocifissione di sant'Andrea, 英: Crucifixion of Saint Andrew）は、聖アンデレの殉教を描いた壮絶な作品です。1976年にマドリードのアルナイス・コレクションからクリーブランド美術館に収蔵され、現在に至ります。

作品の背景と概要

この絵画は、聖アンデレがギリシャのパトラスで殉教したとされる場面を描いています。聖アンデレはロープで十字架に縛られ、二日間生きながらえたと伝えられています。群衆に説教を続けた後、人々は彼の解放を求めましたが、ローマの代理執政官アエゲアスはそれを拒否。聖アンデレは殉教を祈り、彼を降ろそうとした刑吏は奇跡的に麻痺し、その中で聖人は息を引き取ったとされています。

カラヴァッジョは、聖アンデレがX字形の十字架にかけられるという一般的な描写ではなく、ラテン十字架にかけられた姿を描いています。これは、16世紀の信念に影響を受けたと考えられています。また、画面左下に描かれた喉の膨らんだ老婆は、当時のナポリでよく見られたヨウ素不足による甲状腺腫を表現しており、カラヴァッジョの写実的な描写が際立っています。

歴史と来歴

1610年、ナポリ副官であったフアン・アロンソ・ピメンテル・デ・エレーラは、スペインへ帰国する際にこの絵画を携行しました。この作品は、家族の宮殿に飾られ、1652年の鑑定では、家族コレクションの中で最も価値のある絵画とされました。鑑定人は、「黒檀の額縁に入れられ、3人の死刑執行人と女性の間で十字架にかけられた裸の聖アンデレの大きな絵」と記述し、作者を「ミカエル・アンヘル・カラバーリョ」としました。

この絵画は、ナポリ副王が聖アンデレを深く信仰していたことから、彼によって委嘱された可能性が高いとされています。副王はアマルフィ大聖堂の聖アンデレの地下室の改修にも携わっていました。

作品の複数のバージョン

現在クリーブランド美術館にある作品は、バリャドリッドにあったものと同一と考えられています。しかし、同じ構図の他のバージョンも存在します。

1. ロンドンのスパイア・コレクション所蔵の作品: 以前はウィーンにあったもので、当初はカラヴァッジョの作品とされていましたが、クリーブランドのオリジナルが再発見された後は、ルイ・フィンソンによる複製と見なされていました。しかし、2011年以降、再びカラヴァッジョのオリジナル第二のバージョンとして認められるようになっています。
2. トレドのサンタ・クルス美術館所蔵の作品: 1920年に発見されたもので、スペイン内戦中に大きく損傷を受けました。作者は不明とされています。
3. ディジョン美術館所蔵の作品: 長らくアブラハム・ヴィンクの作品とされていましたが、2011年以降、ルイ・フィンソンによるものと考えられています。

このように、「聖アンデレの磔刑」には複数のバージョンが存在し、その真贋や作者については美術史家たちの間で議論が続いています。

作品の重要性

「聖アンデレの磔刑」は、カラヴァッジョの写実的な表現とドラマチックな構成が際立つ傑作です。宗教的なテーマを描きながらも、当時の社会情景や人々の姿をリアルに捉えている点も高く評価されています。この作品は、バロック絵画の発展に大きな影響を与え、後世の画家たちにも多大なインスピレーションを与えました。

参考資料

ベナイ、エリン（2017）。カラヴァッジョの輸出：聖アンドリューのはりつけ。ISBN 978-1911282242
Gash, John (2004). Caravaggio. ISBN 1-904449-22-0

外部リンク

* ウィキメディア・コモンズには、Crucifixion of Saint Andrew by Caravaggioに関するカテゴリがあります。

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