聖カタリナの神秘の結婚 (コレッジョ、デトロイト美術館)

聖カタリナの神秘の結婚

コレッジョの「聖カタリナの神秘の結婚」は、ルネサンス期の画家コレッジョが1512年頃に制作した油彩画です。この作品は、アレクサンドリアの聖カタリナと幼児キリストの神秘的な結婚を主題としており、コレッジョがこのテーマで描いた複数の作品の中でも初期に属すると考えられています。現在、デトロイト美術館に所蔵されています。

主題

伝説によれば、聖カタリナは学識豊かな王女であり、ローマ皇帝マクセンティウスが彼女の信仰を曲げようとしましたが、彼女は学者たちを論破しました。怒った皇帝は彼女を投獄し処刑しようとしましたが、車輪の拷問具が落雷で破壊され奇跡的に助かりました。その後斬首されますが、遺体は天使によってシナイ山の修道院に運ばれたと伝えられています。彼女は生前、隠者から洗礼を受けキリスト教に改宗し、キリストと神秘的な結婚をしたとされています。また、別の伝説では、聖カタリナが聖母子像を授かった際、幼児キリストが彼女の方を向き、指輪をはめたとされます。

作品の特徴

この作品は、アンドレア・マンテーニャとレオナルド・ダ・ヴィンチの影響を受けつつ、コレッジョ独自の表現が融合した初期の作例として評価されています。マンテーニャの正面性を脱却し、より流動的な構図へと発展していく過程が見られます。この作品は、コレッジョによる同主題の絵画の中で2番目に制作されたと考えられていますが、制作年代が近いにもかかわらず、ナショナル・ギャラリー・オブ・アートのバージョンとは異なり、より自然で動きのある構図と表現力を備えています。

画面中央には聖母マリアが幼児キリストを抱き、その右側にはひざまずいた聖カタリナがいます。幼児キリストは聖母に支えられながら、聖カタリナの指に指輪をはめています。聖カタリナは、殉教の象徴である破壊された車輪にマントをかけ、ナツメヤシの葉を持っています。画面左には洗礼者ヨハネが立ち、微笑みながらこの神秘的な結婚の光景を指し示しています。洗礼者ヨハネの姿勢は、聖母のポーズと呼応し、背景の木の枝とともに画面全体に調和をもたらしています。

聖母子の間には、年老いた聖人が書物を持ちながら立っており、聖母の背後には老女の聖人がいます。これらの人物は聖ヨセフと聖アンナ、または聖ザカリアと聖エリザベトであると考えられていますが、特定には議論があります。書物を持つ姿は、聖ザカリアが旧約聖書の預言者ゼカリヤと混同されることが多く、この絵画でも聖ザカリアの可能性が高いとされています。これらの聖人たちは、単なる集合ではなく、聖カタリナの結婚、聖家族、洗礼者ヨハネの家族という、一貫性のあるグループを形成しています。

この作品には、ロレンツォ・コスタやガロファロといったマントヴァやボローニャの芸術的伝統が色濃く見られますが、洗礼者ヨハネの微笑みはレオナルド・ダ・ヴィンチの影響を示唆しています。また、幼児キリストのポーズは、当時パルマ大聖堂にあったチーマ・ダ・コネリアーノの作品と類似しており、コレッジョが1510年代初頭にパルマを訪れていた可能性を示しています。

帰属と制作年代

かつてはレオナルド・ダ・ヴィンチの影響を受けたベルナルディーノ・ルイーニやガウデンツィオ・フェッラーリの作品と考えられていましたが、1900年にオーストリアの美術史家テオドール・フォン・フリンメルによってコレッジョの作品とされました。制作年代は1510年代初頭とされ、「聖フランチェスコの聖母」よりも早い時期の作品とされています。

来歴

絵画の発注者や初期の来歴は不明ですが、最初に記録に現れるのは1627年のゴンザーガ家のコレクションの目録です。その後、イングランド国王チャールズ1世に売却され、チャールズ1世の処刑後には様々な人物の手に渡りました。最終的には、デトロイト・ニュースの創刊者の娘であるアンナ・スクリップス・ウィットコムが購入し、1926年にデトロイト美術館に寄贈されました。

この作品は、コレッジョの初期のスタイルを示す貴重な作品であり、彼の芸術的発展を理解する上で重要な位置を占めています。

ギャラリー

以下に同主題の他のバージョンを掲載します。

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参考文献

黒江光彦監修『西洋絵画作品名辞典』三省堂（1994年）
ジェイムズ・ホール『西洋美術解読事典』高階秀爾監修、河出書房新社（1988年）

外部リンク

デトロイト美術館公式サイト

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