聖フランチェスコの聖母

『聖フランチェスコの聖母』は、ルネサンス期の画家コレッジョが1514年に制作した油彩画であり、彼の初期の代表作の一つです。この作品は、聖会話を主題としており、聖母マリアを中心に、聖フランチェスコ、聖アントニウス、聖カタリナ、洗礼者ヨハネといった聖人たちが描かれています。コレッジョの故郷であるコッレッジョのサン・フランチェスコ教会の高祭壇を飾るために制作されましたが、後にモデナ＝レッジョ公爵のコレクションを経て、現在はドイツのドレスデンにあるアルテ・マイスター絵画館に所蔵されています。

制作経緯

サン・フランチェスコ教会は、コレッジョの中心部に位置し、領主であるダ・コレッジョ家の埋葬地としても重要な教会でした。この教会の祭壇画を制作するために、地元の市民クゥイリーノ・ズッカルディがフランシスコ修道会に遺産を寄贈したことがきっかけとなり、コレッジョに祭壇画が発注されることになりました。契約は1514年8月30日に締結され、コレッジョは当時25歳頃と推測されています。この祭壇画は、若い画家にとって最初の重要な発注であり、その報酬として100ドゥカートが支払われました。

作品

聖母子は、広々とした田園風景を望む列柱に囲まれた台座の玉座に鎮座しています。この玉座は、聖母マリアが「天と地の女王」として称えられていることを象徴しています。玉座の左側には、跪く聖フランチェスコと、百合と本を持つ聖アントニウスが立ち、右側には、剣とナツメヤシの葉を持ち、車輪を踏む聖カタリナと、幼児キリストを指す洗礼者ヨハネが描かれています。玉座の下には、十戒の石板を持つモーセのレリーフが施された楕円形のメダリオンがあり、『旧約聖書』の「創世記」に登場するアダムとイブの物語（アダムの創造、原罪、楽園追放）が描かれていますが、現在ではほとんど見えません。

これらの要素を通じて、コレッジョは天地創造の時代、モーセの時代、そしてキリストの時代という、三つの時代を表現しています。パドヴァの聖アントニウスは、コレッジョ自身の自画像である可能性があり、その表情は場面に参加できる喜びを表しているかのようです。

人物たちは視線や身振りで互いに結びついており、その関係性を明確にしています。聖母マリアは聖フランチェスコを見つめ、保護を与えています。聖フランチェスコと聖カタリナは恍惚とした表情で聖母子を見上げ、聖アントニウスは友人または鑑賞者を見つめています。洗礼者ヨハネはキリストを指し示し、キリストとともに鑑賞者の側を見ています。

画面は列柱によって区切られ、風景へと広がる空間を強調しています。コレッジョの建築学の知識は、遠近法やイオニア式柱頭に見て取れます。この作品には、コレッジョが影響を受けた様々な画家の要素が見られます。例えば、聖母の配置はマンテーニャの『勝利の聖母』に、聖母の笑顔や洗礼者ヨハネのポーズはダ・ヴィンチに、聖人たちの表情はペルジーノ、フランチャ、ラファエロに、天使やプットーはロレンツォ・コスタに影響を受けています。

これらの影響を受けながらも、コレッジョは独自の造形言語を示しており、その後の画業における独創性の兆候が見られます。

来歴

この祭壇画は、1636年にモデナ＝レッジョ公爵フランチェスコ1世・デステによって教会から撤去され、公爵のコレクションに加えられました。その後、フランチェスコ3世・デステは、オーストリア継承戦争の軍事資金を得るために、1745年から1746年にかけてザクセン選帝侯アウグスト3世にエステ家のコレクションの一部を売却し、その際にこの作品もドレスデンへと移されました。

ドレスデンに到着した絵画は、宮廷彫刻家マテウス・クーグラーによって額装されました。これらの額縁は、高品質な木彫に金鍍金が施されており、コレクションに統一感を与えています。

ギャラリー

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脚注

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参考文献

ルチア・フォルナーリ・スキアンキ『コレッジョ イタリア・ルネサンスの巨匠たち28』森田義之訳、東京書籍（1995年）

外部リンク

アルテ・マイスター絵画館公式サイト, コレッジョ『聖フランチェスコの聖母』

関連項目

聖フランチェスコのいるエジプトへの逃避途上の休息
サン・フランチェスコ教会 (コッレッジョ)

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