聖キリル修道院

聖キリル修道院について

聖キリル修道院は、ウクライナの首都キーウに位置する、中世に設立された歴史ある修道院です。その敷地内には、特に有名な聖キリル教会があり、その建築様式と歴史的背景から、多くの訪問者を魅了しています。

歴史

1140年、チェルニーヒウ公国のクニャージであったフセヴォロド・オレゴヴィチによって、キーウのドロホジチ地区に設立されました。修道院の名前は、アレクサンドリアのキュリルに由来します。12世紀後半には、フセヴォロドの未亡人であるマリアによって、オレゴヴィチ一族の祖先の墓所として、石造の聖キリル教会が建てられました。この教会は、修道院の歴史において重要な役割を果たすことになります。

1734年に修道院は火災に見舞われましたが、1750年から1760年にかけて、ウクライナ人建築家イヴァン・グリゴロヴィッチ・バルスキーによって再建されました。この再建では、修復作業だけでなく、修道院の中庭を囲む石壁や、壁の角を守る美しい塔と門などの新たな建築物も追加されました。これにより、修道院の景観は大きく変化しました。

1787年には、ロシア帝国によって修道院は閉鎖され、居住区は病院として使用されることになりました。その後は、精神病者の収容所として利用され、ソビエトウクライナ時代にも20世紀後半までその役割を果たしました。1929年5月8日、ソビエトウクライナ人民評議委員会は、聖キリル修道院を歴史的記念碑と宣言し、「保存地区」を設立することを決定しましたが、同時に教会での礼拝は禁止され、博物館への改装が準備されました。修道院の鐘楼は、イヴァン・バルスキーの博物館へと転用されました。

1936年6月には、最高議会によって可決された法律により、教育人民委員会は聖キリル修道院の建築物の解体を許可しました。1937年には、修道院の壁、門、角の塔の一部、鐘楼が解体され、そのレンガが他の建設プロジェクトに利用されました。幸いにも、聖キリル教会は、内部の中世のフレスコ画や1880年代にロシアの画家ミハイル・ヴルーベリによって描かれた壁画を含めて解体を免れました。また、施設の一部の建築物や、修道院の壁、角の塔、バルスキーによって建設された二つの建物も保存されました。

1965年には、教会は国立聖地「キエフのソフィア」の一部として、大規模修繕や歴史的資料の収集が開始されました。そして、1990年代後半からは、建物内でウクライナ正教会による定期的な礼拝が行われるようになり、現在に至っています。

建物

聖キリル教会

聖キリル教会は、東側に3つの後陣が突き出た長方形の構造をしています。教会のドームと丸天井は、6本の十字状の橋脚の上に建てられています。北壁に設置された階段は、西側の回廊へと続いており、この構造は、キエフ大公国の教会における珍しい特徴の一つです。また、洗礼堂と拝廊の壁龕も、他の教会ではあまり見られない特徴です。元々、丸天井は鋼板で覆われていました。

鐘楼

修道院内に建てられたバルスキーの建物の中で、最も重要なものの一つが、1760年に建てられた自立型の鐘楼です。この鐘楼は、地上部に門が設けられた背の高いカンパニーレと、鐘楼の二段目に位置する礼拝堂を組み合わせた独特のデザインを持っています。鐘楼の下層部分は、ウクライナの三部式教会に見られる、身廊の中央部に鐘楼を配置するという要素を取り入れています。鐘楼の礼拝堂の屋根は、当初は寄棟屋根でしたが、1849年の火災後に再建されました。しかし、1936年にソビエトウクライナ政府が解体を決定したため、鐘楼は破壊され、そのレンガは建設プロジェクトに使用されました。

参考文献

Official Web-site of Holy Trinity Saint Cyril's Monastery(ウクライナ語)
Official Facebook page (ウクライナ語)
Official Web page (英語)
Kyiv History Site - St. Kirill Church
Zhukovsky, A.. “Saint Cyril's Monastery”. Encyclopedia of Ukraine. January 6, 2007閲覧。
Sophia Kyivska - Information from the museum's page and a photo gallery. (ウクライナ語、ロシア語)

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