聖ゲオルギウスの聖母

『聖ゲオルギウスの聖母』は、イタリアの画家コレッジョが1530年頃に制作した板上の油彩画であり、現在はドイツのドレスデンにあるアルテ・マイスター絵画館に所蔵されています。この作品は、マンテーニャの『勝利の聖母』に影響を受け、花で装飾された円蓋の下に聖母マリアと幼子イエス・キリストが中心に描かれています。

画面の左側には、モデナの守護聖人である聖ジミニャーノが司教の衣服をまとい、プット（幼い天使）の助けを借りてモデナの町の模型を手にしています。また、洗礼者ヨハネも描かれています。一方、右側には、ドミニコ会の守護聖人である殉教者聖ペテロが、白と黒の僧服を身に着け、頭部にナイフが刺さった状態で描かれています。さらに、ドラゴンの頭を足元に組み敷いた聖ゲオルギウスが、3人のプットから剣と兜を受け取っています。聖ゲオルギウスの姿は、本作の主題の一つである正義と勇気を象徴しています。

この絵画は、モデナのサン・ピエトロ・マルティーレ教会の礼拝堂の高祭壇画として依頼されました。制作年代は、『聖セバスティアヌスの聖母』の年代測定結果から、1520年代半ば頃までと特定されています。コレッジョが最後に手掛けたパルマ大聖堂の天井画とほぼ同時期に制作され、画家が完成させた最後の宗教的な作品の一つと考えられています。作品の完成までに、現存する2点の準備素描が制作されました。

『聖ゲオルギウスの聖母』は、その美しさから多くの複製や模写が制作されました。画家のジローラモ・コンティとバルトロメオ・パッセロッティによって複製が作られ、ピーテル・パウル・ルーベンスも本作を基に赤チョークの素描を描いています。また、ジョルジョ・ヴァザーリもこの作品について記述を残しています。

1649年、この絵画はフランチェスコ1世・デステによって購入されました。フランチェスコ1世は、グエルチーノに複製を依頼し、礼拝堂の元の場所には複製を設置し、原作はデステ・コレクションに収蔵しました。パードレ・オットネッリやフランチェスコ・スカンネッリなどの美術評論家もこの作品を高く評価しました。1746年には、フランチェスコ3世・デステが本作を含む数点の絵画をフレデリック・アウグストゥス2世に売却しました。

この作品は、コレッジョの晩年の宗教画を代表する傑作の一つであり、その後の多くの画家たちに影響を与えました。美しい色彩、繊細な筆致、そして洗練された構図は、バロック美術の先駆けとも言える要素を備えており、美術史においても重要な作品として位置づけられています。

参考文献として、ジュゼッペ・アダニ著『コレッジョ：普遍的な画家』があります。この書籍では、コレッジョの生涯と作品について詳しく解説されており、『聖ゲオルギウスの聖母』についても詳細な分析と解説がなされています。

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