聖ムィハイール黄金ドーム修道院

聖ムィハイール黄金ドーム修道院

聖ムィハイール黄金ドーム修道院は、ウクライナの首都キーウに位置する正教会の修道院で、同教会の首座主教座大聖堂として重要な役割を果たしています。多くの人々から「黄金ドームの都」として親しまれるキーウの象徴的な建物の一つです。この修道院は単にムィハイール修道院とも呼ばれ、その美しい外観は訪れる人を魅了します。

歴史的背景

この修道院の起源は1108年から1113年にさかのぼります。キエフ大公ヤロスラフ1世の孫、スヴャトポルク2世大公によって、ドニプロ川の右岸、キーウの中心にビザンツ様式の大聖堂が建立されました。大聖堂は、キエフ大公国の守護天使であるムィハイールに捧げられたものであり、当時のキーウにおいて大きな存在感を示していました。

その後の歴史の中で、この聖堂は1240年のモンゴル軍の襲撃や1482年のタタール軍の略奪によって甚大な損害を受けました。しかし、1469年にウクライナ正教会の修道院として復元され、1620年以降はキエフの主教庁の本拠地として機能し始めました。

拡大と発展

18世紀の間、修道院はイヴァン・マゼーパというウクライナ・コサックの指導者たちの支援を受けて、さらにその敷地と領地を広げていきました。新たに食堂、学校、鐘楼などの施設が建設され、大聖堂の内部にあった12世紀のモザイクや壁画が保存されました。また、大聖堂の外観はコサック・バロック様式で改修され、修道院はその美しさを増していきました。

近代の動乱

しかし、18世紀末にウクライナがロシア帝国に統合されると、1800年には修道院がチェルニーヒウ主教庁の臨時的座聖堂になりました。さらにロシア革命により、1922年には宗教団体としての地位が失われ、1934年から1936年にかけて、大聖堂やその周辺の建物が共産党政府のために破壊されるという悲劇的な事件が起こりました。多くの貴重な文化財がモスクワやレニングラードの博物館へと送られてしまいました。

復元と再興

1991年のウクライナの独立以降、状況は大きく変化します。1995年、当時の大統領レオニード・クチマが国家予算を用いて修道院の復元に着手しました。修復作業は1998年に完了し、その後修道院はウクライナ正教会・キエフ総主教庁に引き渡されました。2001年から2004年にかけて、ウクライナはロシアの博物館から取り戻した文化財を修道院に返還し、過去の栄光を取り戻す活動が続けられました。

現在の役割

現在、聖ムィハイール黄金ドーム修道院は教会としての機能を果たすだけでなく、博物館としても多くの訪問者を迎えています。2018年12月には新たに発足した「ウクライナ正教会」が、この修道院をその首座主教座大聖堂と定めました。

歴史の重みを感じるこの修道院は、今日も多くの信者や観光客にとって大切な場所であり続けています。

もう一度検索