聖嶽洞穴

聖嶽洞穴の概要

聖嶽洞穴は大分県佐伯市の本匠村に位置する鍾乳洞で、標高約300メートルの場所にあります。この洞穴は1961年に発見され、河岸にそびえる石灰岩の中腹に広がっており、その奥行は45.5メートルです。洞窟の周辺は美しい自然に囲まれ、多くの観光客が訪れるスポットとなっています。

聖嶽洞窟遺跡の発見

洞穴が見つかった翌年、1962年には別府大学の賀川光夫教授をはじめとする日本洞穴調査委員会が発掘調査を実施しました。この調査により、洞窟内部は三層の土壌で構成されていることが確認されました。具体的には、上層には黒色土層、中層には粘質砂礫土層、下層には粘土層が存在しました。

調査の結果、上層からは中世の宋銭や土器が出土した一方、下層からは後期旧石器時代に属する化石人骨や黒曜石製の石器も見つかりました。これらの発見は、国内で初めて旧石器時代の人骨と石器が同時に出土した事例として注目を浴び、特に九州地方においては初めてのケースとも言われています。出土した人骨は後に「聖岳人」と名付けられ、歴史教科書にも登場することとなりました。

調査の信憑性と後の発表

しかし、1999年の第2次調査によって人骨の年代が旧石器時代よりも新しいことが示唆され、さらに出土した石器もその年代に疑問が持たれることとなりました。この調査を担当した国立歴史民俗博物館の春成秀爾教授による報告は、「発掘された旧石器は混入の可能性が高い」と結論しました。この報告は後に聖嶽洞窟遺跡の捏造疑惑に発展します。

捏造疑惑の発生

2000年8月に発表された第2次調査の中間報告では、発掘された人骨が旧石器時代のものでないことが報道され、考古学界に衝撃を与えました。この件は、当時の藤村新一による旧石器捏造事件の影響もあり、「聖岳人」の捏造疑惑が大きく報じられることとなります。特に週刊文春による報道は、賀川教授への激しいバッシングを引き起こしました。

賀川教授は報道による中傷の影響で精神的に追い詰められ、最終的には自ら命を絶つという悲劇に見舞われました。この件において遺族は、週刊文春に対して名誉毀損による損害賠償を求める訴訟を起こしました。

裁判とその後

裁判では、文春側の取材体制の甘さが問題視され、最終的には福岡高裁が遺族の主張を支持し、文春に対して慰謝料と謝罪広告の掲載を命じる判決を下しました。これにより、文春側は聖嶽洞窟遺跡に関する報道において、信頼性のない情報が広まったことが確認されました。

この騒動は考古学界の信頼を揺るがす大事件となり、後に日本考古学協会からも聖嶽遺跡問題に関する総括が公表されることになりました。このように、聖嶽洞穴の発見とその後の調査は、考古学の信頼性や報道のあり方について考える重要な課題となっています。

聖嶽洞穴は、美しい自然と同時に考古学の謎を抱えた場所として、今後も研究の対象となり続けることでしょう。

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