聖母の聖ベルナルドゥスへの顕現

『聖母の聖ベルナルドゥスへの顕現』（伊:Apparizione della Vergine a san Bernardo）は、イタリア・ルネサンス期に活躍した画家、ピエトロ・ペルジーノによって描かれた油彩の板絵です。ペルジーノは、ウンブリア派を代表する芸術家の一人であり、本作は彼の円熟期の作品として知られています。

この絵画は、元々フィレンツェのサンタ・マリア・マッダレーナ・デイ・パッツィ教会にあるナージ家礼拝堂の祭壇画として制作されました。その後、1829年から1830年にかけて、フィレンツェのカッポーニ家からバイエルンのルートヴィヒ1世に購入され、最終的にミュンヘンのアルテ・ピナコテークに収蔵されました。

作品は、聖ベルナルドゥスが、日中の明るい光の中で現れた聖母マリアの幻視に遭遇し、研究を中断させられている様子を描いています。聖ベルナルドゥスは、深く瞑想に耽っていたのでしょう。突然の聖母の出現に驚きを隠せない様子が伝わってきます。聖母の周りには、福音書記者聖ヨハネと聖バルトロマイを含む4人の聖人が配され、神聖な雰囲気を高めています。

構図は一見すると、完璧な対称性を持っているように見えますが、よく見ると、聖母の位置や聖ベルナルドゥスの祈祷台がわずかにバランスを崩しており、それが作品に動きと自然な印象を与えています。このわずかなずれが、作品を静的で人工的なものにしないための工夫であると考えられます。

人物の表情は、個人的な特徴やリアリズムを強調するのではなく、穏やかな美しさを追求しています。色彩も派手ではなく、明るく輝いており、作品全体の調和を保っています。ペルジーノは、この作品で、ルネサンス美術の理想である均整と調和を高いレベルで達成していると言えるでしょう。

美術史家の間では、本作は「15世紀後半のヨーロッパ絵画の傑作の一つ」と評されており、ペルジーノの代表作としてだけでなく、ルネサンス美術全体の中でも重要な作品と位置づけられています。

この作品を通して、観る者は、聖ベルナルドゥスの敬虔な姿と、聖母マリアの神聖な出現を目の当たりにし、深い感動を覚えることでしょう。ペルジーノの卓越した技術と芸術的感性が、この絵画に永遠の命を吹き込んでいるのです。

参考文献

Gombrich, E.H., The Story of Art, 16th ed. (London & New York, 1995), ISBN 0-7148-3355-X
Gould, Cecil, The Sixteenth Century Italian Schools, National Gallery Catalogues, (London 1975), ISBN 0-947645-22-5
Walther, Ingo F. & Robert Suckale (eds.), Masterpieces Of Western Art: A History Of Art In 900 Individual Studies*, (Cologne, 2002) ISBN 3-8228-1825-9

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