聖母子と幼児聖ヨハネ (ボッティチェッリ、サンパウロ美術館)

聖母子と幼児聖ヨハネ



『聖母子と幼児聖ヨハネ』(伊: Madonna col Bambino e san Giovannino, 英: Virgin and Child with the Infant St. John the Baptist)は、イタリア盛期ルネサンスの巨匠サンドロ・ボッティチェッリとその工房によって、1490年から1500年頃に制作されたテンペラ画です。円形のトンド形式で描かれ、聖母マリアを主要なテーマとしています。現在、この作品はブラジルサンパウロ美術館に所蔵されています。

作品の特徴



ボッティチェッリは1480年から1490年代にかけて、数多くの聖母像を制作しました。これらの作品の多くはトンド形式で、聖母子と洗礼者聖ヨハネを描いています。トンドは、円形の絵画や彫刻作品であり、宗教的あるいは歴史的なテーマを扱うことが一般的です。15世紀には特に高く評価され、後援者や組合によって宮殿の装飾や個人的な信仰の対象として依頼されることが多くありました。

サンパウロ美術館所蔵の『聖母子と幼児聖ヨハネ』は、他の作品との様式的な類似性から、15世紀最後の10年間に制作されたと考えられています。この作品では、聖母子がトンドの内側に大胆に配置されており、構図の美しい構造が際立っています。また、傾斜した椅子の細部や、まるで額縁に支えられているかのように見えるマニフィカトの配置など、細部にわたる表現が目を引きます。さらに、聖母マリアと幼児キリストの間に見られる感情的なつながりの強化は、ボッティチェッリの初期の聖母像にはあまり見られない特徴です。

イタリア美術史家ロベルト・ロンギは、この作品の構成が「アーチ型のしなやかな線」ではなく、「十字と放射状の線」で構築されていると指摘し、ボッティチェッリの成熟した様式を示すより自由な構図の中に位置づけています。アントニーノ・サンタンジェロも同様の意見を持ち、「手や顔の自由で調和のとれた絡み合い、可動性と正確さは、1500年頃のボッティチェッリの作品を彷彿とさせる」と述べています。

15世紀最後の10年間に制作されたボッティチェッリの作品は少なくとも12点確認されており、マサチューセッツ州ウィリアムズタウンにあるクラーク美術館の同名の作品は、構図的にサンパウロ美術館の作品に最も近いとされています。

帰属について



作品の帰属については、美術史家ロベルト・ロンギが1947年に詳細な分析を行いました。彼は、美術館の館長ピエトロ・マリア・バルディ宛の手紙の中で、トンドの中に「間違いなくボッティチェッリの筆致」を見ることができると主張しました。アントニーノ・サンタンジェロも同様に、「ボッティチェッリによる絵画の直接的な関与が認められる」と述べています。この帰属は、ミクロス・ボスコヴィッツや矢代幸雄を含む他の専門家によっても確認されています。

しかし、多くの研究者は、背景の一部や洗礼者聖ヨハネと聖母子の間に見られる様式的な差異に基づき、ボッティチェッリの工房の助手によって制作された部分があるという点で意見が一致しています。ロベルト・ロンギは、風景と洗礼者聖ヨハネの描写が、ドメニコ・ギルランダイオの典型的な作風に近いと指摘し、両画家の弟子であったバルトロメオ・ディ・ジョヴァンニが制作に関与した可能性を示唆しています。アントニーノ・サンタンジェロは、洗礼者聖ヨハネを描いたのはラファエリーノ・デル・ガルボであるとしています。

来歴



この作品はもともとフィレンツェのカッポーニ宮殿に飾られていましたが、19世紀にリヴァプールの裕福なイギリス商人トーマス・ブレイズの個人コレクションに加わりました。その後、第24代クロフォード伯爵ジェイムズ・リンジーに売却され、1947年にシンハ・ジュンケイラ夫人によってサンパウロ美術館に寄贈されました。

ギャラリー



ボッティチェッリによる1490年頃のトンド作品

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脚注



[参考文献]
バルバラ・ダイムリング『ボッティチェッリ(ニューベーシック・アートシリーズ)』 タッシェン(2001年)
Carlo, Bo, Mandel, Gabriele. L'opera completa di Botticelli, Milan, Rizzoli, 1967.
Marques, Luiz. Catálogo do Museu de Arte de São Paulo Assis Chateaubriand: Arte italiana, São Paulo, Prêmio, 1998.

外部リンク



サンパウロ美術館公式サイトの該当ページへのリンク'>サンパウロ美術館公式サイト, サンドロ・ボッティチェッリ『聖母子と幼児聖ヨハネ』

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