聖母子と洗礼者聖ヨハネ、アレクサンドリアの聖カタリナ (ペルジーノ)

『聖母子と洗礼者聖ヨハネ、アレクサンドリアの聖カタリナ』

ピエトロ・ペルジーノによって1495年頃に制作された油彩画『聖母子と洗礼者聖ヨハネ、アレクサンドリアの聖カタリナ』は、ルネサンス期の宗教画を代表する作品の一つです。この絵画は、もともとシエナの将軍スパンノッキの依頼により制作されましたが、後にフランスの将軍シティヴォーの手に渡り、1816年にパリへともたらされました。1821年以降は、ルーヴル美術館に収蔵され、現在に至っています。

作品の特徴

本作は、半身像が画面を埋め尽くす形式をとり、15世紀後半によく見られた構図です。しかし、ペルジーノは肖像画で一般的だった黒い背景を聖人画に取り入れ、新たな展開を見せました。この暗い背景は人物の肌の色を際立たせ、厳粛な雰囲気を醸し出しています。また、抑制された光がまるでスポットライトのように人物の頭部を照らし出し、赤い衣服が鮮やかさを添えています。

主題は、玉座に座る聖母マリアと幼子イエスを中心に、洗礼者ヨハネと聖カタリナが左右に配置された、伝統的な構成を拡大したものです。聖母マリアの顔は、ペルジーノの妻キアラ・ファンチェッリがモデルであるとされています。左側の人物は赤い衣服と巻き毛から洗礼者ヨハネと識別されますが、聖母の夫である聖ヨセフであるという説も存在します。

聖カタリナは、伝統的な持ち物であるシュロを持っており、衣服の縁には「S. Chaterina（聖カタリナ）」と記されています。彼女は中世後期に広く敬愛された聖女で、キリストと神秘的な婚姻関係を結んだと伝えられています。

この作品は、ペルジーノが同じ形式を繰り返し用いた作品の一つであり、『聖母子と二人の聖人』（ウィーン美術史美術館）や『聖母子と幼児洗礼者聖ヨハネ』（フランクフルト、シュテーデル美術館）と同一の下絵を使用しています。これらの作品にはほとんど差異が見られません。

作品の背景

ペルジーノは、ルネサンス期を代表する画家の一人であり、その作品は優美で調和の取れた構図が特徴です。本作においても、人物の配置や表情、色彩の使い方が丁寧に計算されており、見る者に静謐な感動を与えます。

ルーヴル美術館に収蔵されている本作は、ペルジーノの画業を代表する作品の一つとして、多くの人々に愛され続けています。

脚注

[1] ヴァンサン・ポマレッド監修・解説『ルーヴル美術館 収蔵絵画のすべて』、ディスカヴァー・トゥエンティワン、2011年
[2] 中山公男・佐々木英也責任編集『NHKルーブル美術館IV ルネサンスの波動』、日本放送出版協会、1985年
[3] Vittoria Garibaldi, Perugino, in Pittori del Rinascimento, Scala, Florence, 2004
[4] Pierluigi De Vecchi, Elda Cerchiari, I tempi dell'arte, volume 2, Bompiani, Milan, 1999.
[5] Stefano Zuffi, Il Quattrocento, Electa, Milan, 2004.

外部リンク

* ルーヴル美術館公式サイト、ペルジーノ『聖母子と洗礼者聖ヨハネ、アレクサンドリアの聖カタリナ』 (フランス語)

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