聖職者民事基本法

聖職者民事基本法

概要

聖職者民事基本法（Constitution civile du clergé）は、1790年7月12日にフランスの憲法制定議会で制定され、国王ルイ16世により同年8月24日に承認された。この法律は、フランス国内のカトリック教会の運営を国家の管理下に置くものであり、さまざまな改革を通じて聖職者の地位を公務員として再編成しました。この法律は「聖職者基本法」、「聖職者公民憲章」とも呼ばれ、多くのカトリック聖職者にとっては受け入れがたいものでした。

内容と目的

聖職者民事基本法は、4つの主要な編から成り、聖職者の職務、任用、報酬、居住について規定しました。この法律は以下のような特徴を持っています。

1. 区画の刷新: 新たに設置された83の県に合わせ、それぞれ1つの司教区を持つことが義務付けられ、従来の133の司教区は83に再編されました。人口が6,000人未満の市町村が単一の教区にまとめられる一方、人口が6,000人以上の都市は分割が許可されました。

2. 聖職禄の廃止: すべての特別職や聖職禄が廃止され、教会内における地位が平等化しました。

3. 選挙制の導入: 聖職者の任用は国民の意思を反映した選挙によって行われることになり、司教は少なくとも15年間その地域に勤務している必要がありました。

4. 外部権威の排除: 国外の権力（例えばローマ教皇）から任命された司教の権威を認めず、司教は教皇に許可を求めてはならないとされました。

5. 宣誓義務: 聖職者は、国及び国王に忠実であること、憲法を維持することを宣誓しなければなりませんでした。

6. 公務員化: 聖職者は国家により給与を得る公務員としての地位を与えられました。

このような改革の狙いは、フランス革命の理念を教会にも持ち込むことで、従来の絶対的な教会の権力を削減し、国民の権利を保障することにありました。

背景

革命前のフランスでは、教会は経済的権力を持つ特権階級の一部として存在していました。1789年にフランス革命が始まると、カトリック教会は国家の支配下に置かれ、封建制度の打破とともに教会財産が国有化されることになります。さまざまな改革が進む中、聖職者の中にも革命の理念に同調する者が多かった一方、旧来の教会権力に対する反発も根強く残っていました。

特に、教王との関係が悪化する中で、国王ルイ16世の承認を得た聖職者民事基本法は多くの問題を引き起こすこととなります。聖職者の大多数は、憲法に対して誓いを立てることを拒否し、革命の理念に対抗する宗教的対立が深まっていきました。

宣誓拒否聖職者と対立の深化

聖職者民事基本法施行後、全国の聖職者は2ヶ月以内に憲法を支持する宣誓を求められましたが、多くの聖職者がこの要求を拒否しました。この結果、特にカトリックが強い地域では宣誓拒否聖職者が増え、彼らが地元の信徒とのつながりを強める中で、一般市民も巻き込んだ対立が生じました。教皇ピウス6世の反発も、聖職者の分裂を助長し、教会内外での信徒の不安をさらに増幅させました。

宣誓拒否聖職者と立憲派聖職者の間の対立は、さらなる暴力と混乱を引き起こし、ヴァンデの反乱などの反革命運動へとつながっていきます。この動乱の中で、教会の役割は一層複雑化し、国民と教会の間の信頼関係は失われ、教会は単なる政治の道具として扱われることになりました。

影響とその後

1794年には聖職者民事基本法は廃止されますが、その後も教皇とフランスとの敵対は続き、最終的には1801年にナポレオンとの間で結ばれたコンコルダートによってある程度の和解を見ることになりました。これにより、 Catholic Churchの権威が部分的に回復しつつも、フランスにおける宗教体制は根本から再構築され、カトリック教会は国家と共存する新しい形に変わっていきました。

このように、聖職者民事基本法はフランス革命における宗教と政治の関係を変革し、カトリック教会の権力構造に大きな影響を及ぼす重要な試みであったと言えます。

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