職分田

職分田（しきぶんでん）について

職分田とは、古代東アジアにおける律令制の枠組みの中で、官職に就いている者に与えられた田地を指します。この制度は特に中国と日本において有名で、それぞれの国で異なる運用がなされていました。

中国における職分田の制度

中国では、隋や唐の時代に均田制が導入され、成人男性には一律に口分田と世業田が支給されることが基本とされていました。しかし、官人と呼ばれる官職にある者には、さらに職分田が支給されていました。この職分田は、官職を辞める際には返納が求められる規定がありました。また、官人たちは自ら耕作権を持つ職分田を、希望する均田農民に貸し出し、その収穫の一部を私的な租税として徴収していました。このように、職分田は官人にとって重要な収入源となっていたのです。

日本における職分田の制度

日本では、701年に制定された大宝律令において職田（しきでん）や公廨田（くがいでん）の規定が設けられました。職田は大納言以上の太政官の官人や地方の郡司に支給され、一方の公廨田は地方国司や大宰府の官人に与えられました。唐令における職田が職を有する官人向けに定められていたのに対し、日本では職田と公廨田が両方とも官人を対象にしており、概念としての大きな違いは存在しませんでした。

両者に共通しているのは、田租が免除された不輸租田であることです。しかし、大宝令以前における職田や公廨田の詳細については多くが不明であり、近江令や飛鳥浄御原令に何らかの規定があった可能性はありながらも、今はその記録が失われています。

757年に施行された養老律令では、職田と公廨田が一本化されて職分田として定められました。太政官の官人や大宰府官人、地方国司、郡司に対し、官職に応じた面積が支給される点には変わりがありませんでしたが、特に郡司への職分田は、他の官職に比べ広い面積が与えられたことが注目されます。

また、教育に重きが置かれるようになり、大学寮に在籍する博士には特別に博士職田が支給されるようになったことも知られています。791年には大学博士や明法博士に博士職田の加増が行われましたが、他の博士職には現状維持が求められました。これは、博士職田がどの時点から支給され始めたかは不明ながらも、制度の一環として機能していたことを証明しています。

職分田制の変遷と富裕層の出現

律令制がゆるんでいった9・10世紀になると、大宰府の官人や国司、郡司たちは職分田を原資として富を蓄積し始めました。この過程で、富豪と呼ばれる者たちが現れ、農業経営を専門に行う田堵（たと）へと成長していくケースも見受けられるようになります。このように、職分田の制度は当時の社会において重要な経済的役割を果たしていたのです。

このように、職分田は古代の律令制において官人の生活基盤となり、その影響は中世・近世へと続いていったのです。

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