肉体の悪魔 (1971年の映画)

映画『肉体の悪魔』解説

『肉体の悪魔』（原題: The Devils）は、1971年に公開されたイギリスのドラマ映画です。ケン・ラッセルが監督を務め、ヴァネッサ・レッドグレイヴとオリヴァー・リードが主演を務めました。この映画は、17世紀フランスで実際に起きた「ルーダンの悪魔憑き事件」を題材としており、オルダス・ハクスリーのノンフィクション小説『ルーダンの悪魔』と、それをジョン・ホワイティングが戯曲化した『悪魔たち』を原作としています。

物語の背景

物語は、17世紀のフランス、ルーダンという町を舞台に展開します。主人公は、カリスマ的な司祭ユルバン・グランディエです。彼は、その魅力的な人柄と教養の高さで、多くの人々から尊敬を集めています。しかし、同時に、その奔放な生き方は、教会関係者や地元有力者たちの反感を買い、妬みの対象となっていきます。

一方、修道院長ジャンヌ・デサンジュは、グランディエに恋心を抱き、その欲望を抑えきれずにいました。彼女の歪んだ愛は、次第に狂気に変わり、やがて、町全体を巻き込む悪魔憑き事件へと発展していきます。

作品の特徴

この映画は、その過激な描写とバロック的な映像美で、公開当時から大きな話題を呼びました。特に、修道女たちが悪魔に憑依されるシーンや、グランディエが拷問を受けるシーンなどは、観る者に強い衝撃を与えます。また、この作品は、カトリックの尼僧を題材としたナンスプロイテーション映画の先駆けとも言われています。

キャスト

ジャンヌ・デサンジュ修道院長：ヴァネッサ・レッドグレイヴ
ユルバン・グランディエ司祭：オリヴァー・リード
ローバルドモン男爵：ダドリー・サットン
イベール：マックス・アドリアン
マドレーヌ：ジェマ・ジョーンズ
ミニヨン神父：マーレイ・メルヴィン
バレ神父：マイケル・ゴザード
アダム：ブライアン・マーフィー
ルイ・トランカン：ジョン・ウッドヴァイン
フィリペ：ジョージナ・ヘイル
リシュリュー枢機卿：クリストファー・ローグ
ルイ13世：グラハム・アーミテージ
* ツイッギー

評価

映画の評価は、批評家によって意見が分かれています。

Rotten Tomatoesでは、31件のレビューに基づいて68%の支持率を得ており、平均点は10点満点中8点です。批評家の一致した見解は、「残忍なまでにスタイリッシュなケン・ラッセルのバロック的芸術作品は、最大の冒涜は権力のために信仰心を利用することであるという主張において挑発的であり、且つ説得力がある。」とされています。

一方、Metacriticでは、11件のレビューに基づいて平均点が100点満点中49点と、評価が分かれています。このことから、本作は、観る人によって評価が大きく異なる作品であることがわかります。

テーマ

『肉体の悪魔』は、単なる悪魔憑き事件を描いた映画ではありません。この作品は、権力と宗教の腐敗、人間の欲望と狂気、そして、信仰心の歪みなど、人間の根源的なテーマを深く掘り下げています。また、その過激な表現は、観る者に、既存の価値観を問い直し、深く考えさせるきっかけを与えます。

まとめ

『肉体の悪魔』は、その衝撃的な内容と映像美で、映画史に残る問題作として知られています。この映画は、単なるエンターテイメント作品としてだけでなく、社会や人間の本質について深く考えさせられる作品として、今後も多くの人に語り継がれていくでしょう。

もう一度検索