肉体の門 (1988年の映画)

映画『肉体の門』詳細解説

1988年に公開された『肉体の門』は、五社英雄監督による、田村泰次郎の同名小説を映画化した作品です。主演はかたせ梨乃で、彼女が演じる浅田せんを中心とした、戦後の混乱期を生きる女性たちの姿を描いています。本作は、五社監督にとって最後の東映作品であり、笠原和夫が脚本を手掛けた異色作としても知られています。

あらすじ

舞台は敗戦直後の東京。有楽町の廃墟ビルに住むパンパン（売春婦）グループは、米兵とは絶対に寝ないという掟のもと、結束していました。彼女たちの夢は、資金を貯めてダンスホールを開業すること。しかし、仲間内の裏切り、特攻隊の生き残りとの出会い、そしてライバルグループとの抗争など、様々な出来事が彼女たちを待ち受けています。それぞれの思惑が交錯する中で、女たちはそれぞれの道を歩むことになります。

キャストとキャラクター

浅田せん（かたせ梨乃）：通称「関東小政」。左太ももに刺青を持つ娼婦。過去に壮絶な経験をしており、戦争を憎んでいる。伊吹新太郎に恋心を抱いている。
彫留（芦田伸介）：入れ墨師。せんの良き理解者であり、父親のような存在。
伊吹新太郎（渡瀬恒彦）：元陸軍上等兵。せんたちのグループに助けられ、行動を共にするようになる。
菅マヤ（加納みゆき）：通称「ボルネオマヤ」。心優しい性格で、仲間思い。
安井花江（山咲千里）：通称「フーテンのろく」。せんのことを「兄貴」と呼んでいる。
乾美乃（長谷直美）：通称「ジープのみの」。アメリカ人との結婚も考えている。
本庄光代（芦川よしみ）：通称「きすくれのミッチ」。ダンスホール開業が夢。
柴田幸子（松岡知重）：通称「ベイビー」。口が不自由だが、手話で意思疎通ができる。
菊間町子（西川峰子）：当初は大人しい未亡人を装っていたが、後に本性を現す。
きたがわ澄子（名取裕子）：通称「らくちょうのお澄」。ライバルグループのリーダー。
大森銀子（松居一代）：お澄の妹分。
ビッグママお京（マッハ文朱）：お澄の妹分。長身で力持ち。
袴田義男（根津甚八）：袴田組の親分。せんたちの縄張りを狙っている。

作品の特徴

五社英雄監督の演出：五社監督らしい、激しいアクションシーンや、女優たちの脱ぎっぷりが話題となりました。特に、女性同士の激しい争いや、男女の絡みは、見る者に強烈な印象を与えます。
戦争への問題意識：脚本を担当した笠原和夫は、戦争に対する深い問題意識を本作に込めました。戦後の混乱期を生きる女性たちの姿を通して、戦争の悲惨さや人間の欲望が描かれています。
女優たちの熱演：かたせ梨乃をはじめとする女優たちは、本作で大胆な演技を披露しています。彼女たちの熱演は、観客を物語の世界へと引き込みます。
過激な描写：本作には、リンチシーンやヌードシーンなど、過激な描写が多く含まれています。これらのシーンは、作品のテーマを強調する上で重要な役割を果たしています。
撮影秘話：撮影現場では、様々なアクシデントやハプニングがありました。特に、マッハ文朱が丸太ん棒の直撃を受け大怪我を負った事件や、かたせ梨乃と名取裕子が本物のドスで戦うシーンを撮影するよう五社監督が指示したという逸話は有名です。また、真冬の撮影にも関わらず、セリフを言う時に役者たちの息が白くならないように口に氷を含ませていたなどの苦労話もあります。

「パラダイス」への夢

せんたちのグループは、アジトである廃墟ビルをダンスホール「パラダイス」に改装することを夢見ていました。彼女たちにとって、それは単なる娯楽施設ではなく、未来への希望の象徴でした。

作品の評価

『肉体の門』は、公開当時、その過激な描写や女優たちの熱演が話題となり、賛否両論を呼びました。しかし、その衝撃的な内容と映像は、多くの観客の記憶に残り、映画史に残る作品として評価されています。

メモ

映画ポスターのキャッチコピーは、「うっかり抱くと危ないよ！1947夏 爆（は）ぜる女の謝肉祭（カーニバル）」
1990年代後半に地上波の放送コードが規制されるまではゴールデンタイムにも放送されていた。
劇中に登場する一トン爆弾は、せんたちのアジトを守る守り神のような存在として描かれている。
クライマックスシーンの爆破シーンは、五社監督が撮影時に追加した。

『肉体の門』は、戦後の混乱期を生きる女性たちの姿を通して、人間の欲望、裏切り、そして友情を描いた、見ごたえのある作品です。未見の方は、ぜひ一度ご覧ください。

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