肱川あらし

肱川あらし：愛媛県大洲市の冬の風物詩

愛媛県大洲市で初冬の朝に見られる、独特の気象現象が「肱川あらし」です。大洲盆地で発生した霧が、肱川を下って河口から海へと吹き抜ける、冷たい強風を伴う現象です。かつては「肱川おろし」とも呼ばれていましたが、現在では「肱川あらし」の名称が一般的になりつつあり、大洲市広報紙でも「あらし」として表記されています。名称が変わった経緯は、現時点では明らかになっていません。

発生メカニズム

肱川あらしは、冬型の気圧配置が緩んだ日の朝に発生します。大洲盆地と瀬戸内海の伊予灘との間で気温差が生じると、盆地では放射冷却によって地表が冷え込みます。この冷え込みによって発生した霧が、肱川を流れ下ります。肱川下流部は、山脚が河口付近まで迫る特殊な地形をしているため、霧は一気に海へと流れ出し、強い風を伴います。

大規模な肱川あらしの場合、霧は沖合数キロメートルまで達し、長浜大橋付近では風速15km/hを超えることもあります。長浜大橋は可動橋として知られており、この橋周辺での風速測定データが、現象の規模を測る指標となっています。

気象学的考察

内陸部の大洲盆地と肱川河口の間には、最大で2hPa程度の気圧差が生じることが長期観測で明らかになっています。この気圧差が、10m/sもの風速を生み出す原動力となっています。また、冷気移流に伴う逆転層が河口付近に形成されることも、調査によって確認されています。これらの気象条件が複雑に絡み合い、肱川あらしという独特の現象を作り出しているのです。

肱川あらし展望公園

河口近くの小高い山の上には、「肱川あらし展望公園」が整備されています。この公園からは、肱川あらしの壮大な眺めを楽しむことができます。公園の正確な位置は、北緯33度36分40.4994秒、東経132度29分10.392秒です。

他の局地風との関連

肱川あらしは、局地風と呼ばれる、特定の地域で発生する特殊な風の1つです。他の例としては、川内川あらし、今津あらしなどがあります。これらの現象は、それぞれ地形や気象条件によって異なる特徴を持っています。

予報と情報

肱川あらしの予報を行う取り組みも行われています。肱川あらし予報会や、岡山理科大学大橋研究室によるAI予報システムなどが活用されています。また、大洲市ホームページや国土交通省四国地方整備局のウェブサイトでは、肱川あらしに関する情報や、河口付近のライブカメラ映像などを公開しています。これらの情報源を活用することで、肱川あらしの発生状況をリアルタイムで把握することができます。

参考文献

国土交通省四国地方整備局「四国地方の古地理に関する調査報告書『川と人との歴史ものがたり』」(PDF)
JTB「感動の瞬間（とき）100選」

まとめ

肱川あらしは、地形と気象条件が複雑に絡み合って発生する、愛媛県大洲市の冬の風物詩です。その発生メカニズムや予報に関する研究も進められており、今後もこの興味深い現象についての理解が深まっていくことが期待されます。

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