肱川

肱川（ひじかわ）

肱川は、愛媛県を流れる一級河川であり、四国山地を源流としています。その全長は約103キロ[[メートル]]で、流域面積の約9割が山地で占められています。特筆すべきは、源流から河口までの直線距離が約18キロ[[メートル]]と、その流路が大きく蛇行している点です。

地理的特徴

肱川は、西予市宇和町に源を発し、南流した後、東へ向きを変え、西予市野村町で黒瀬川、船戸川と合流し北へと流れます。中流域には大洲盆地が広がり、流れは緩やかになります。下流域は大洲市北部で両岸が迫る渓谷状となり、瀬戸内海へと注ぎます。河口には三角州は形成されていませんが、海中には大量の川砂が流れ込んでいます。

肱川の流域は、山地が大部分を占め、平野部は中流域よりも上流側の盆地に限られるという特異な流域像を持っています。また、河口部は水深が深く、河川勾配が緩いため、海水の遡上が見られることもあります。一方、ダムの放流によって、下流域では流量が大きく変動するという特徴も持ち合わせています。

肱川あらし

冬には、肱川の上流である大洲盆地から吹き下ろす「肱川あらし」と呼ばれる局地風が発生します。これは、盆地で発生した霧が風に乗って河口へと流れ込む現象で、その様子を観測できる「肱川あらし展望公園」も整備されています。

流域の特性と災害

肱川は、その地形と流域の特性から、水害が発生しやすい河川です。特に中上流域では、川沿いに市街地が点在する盆地で貯留型の氾濫が起こりやすく、下流域では、支川の合流が多く河川勾配が緩やかなため、貯留型や拡散型の氾濫が起こりやすいという特徴があります。

水害の歴史

大洲盆地は、古くから水害の常襲地帯として知られています。過去には、1943年や1945年の水害で甚大な被害が発生しました。特に、2018年の豪雨では、ダムの緊急放流によって死者も出ており、情報伝達の課題も指摘されています。

渇水

一方で、2009年には記録的な渇水に見舞われ、ダム地点の総雨量が過去最少を記録しました。このように、肱川は水害と渇水の両方のリスクを抱える河川です。

利水と産業

肱川は、その水資源が流域だけでなく、他の地域にも利用されています。野村ダムによって堰き止められた水は、南予用水を通じて広範囲に供給され、特に柑橘類の栽培に不可欠な水となっています。

農業

肱川の流域は、砂地が多く水稲栽培よりも野菜栽培に適しており、サトイモなどの栽培が盛んです。また、畑の境界を明確にするために樹木が植えられてきたという歴史もあります。

林業と工芸

かつて、肱川流域では水防林として竹などが植えられ、竹工芸品が作られていました。また、桑の木も推奨され、養蚕も行われていました。

水運

中下流域では、かつて河川舟運が発達しており、河口の長浜は木材などの集散地として栄えました。現在でも、その名残として長浜大橋（可動橋）が残っています。

漁業と観光

肱川では、アユ漁が営まれており、大洲の鵜飼は日本三大鵜飼の一つとして観光資源となっています。また、地域住民による水辺づくり活動も行われており、手づくり郷土賞を受賞しています。

主な支流

黒瀬川
舟戸川
河辺川
小田川
田渡川
中山川
久米川
矢落川
大和川

主な橋梁

新冨士橋
（旧）冨士橋 - 2023年11月より撤去工事

主なダム

野村ダム
鹿野川ダム

名称の由来

肱川の名称の由来には諸説あります。

流路が肘のように屈曲しているから。
泥土やぬかるみを「ひじ」と呼んでいたことから。
伝説では、人柱となった乙女を弔うために名付けられたとも言われています。

脚注

注釈

出典

参考文献

小倉 紀雄、島谷 幸宏、谷田 一三（編集） 『図説 日本の河川』 朝倉書店 2010年1月30日発行 ISBN 978-4-254-18033-6
横山昭市（編著）『肱川 人と暮らし』（財団法人愛媛県文化振興財団）
大洲工事五十年史

外部リンク

肱川 - 河川概要 国土交通省

関連項目

* 日本の川一覧

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