胡徳済

胡徳済（こ とくさい）は、元末から明初にかけて活躍した武将で、生没年ははっきりしていません。字（あざな）は世美（せいび）と称しました。彼は、胡大海（こ だいかい）の養子となり、その縁で朱元璋（しゅ げんしょう）の麾下に入りました。

1358年、胡徳済は婺州（ぶしゅう）攻略戦に参加し、陽動作戦を担当しました。梅花門外で元軍を破り、その将である季弥章（き みしょう）を捕らえるという戦功を立て、その名を広く知られるようになりました。1360年には、胡大海が信州（しんしゅう）を攻略すると、胡徳済は朱元璋から行枢密院同僉（ぎょうすうみついんどうけん）に任命され、信州の守備を任されました。陳友諒（ちん ゆうりょう）の将である李明道（り めいどう）が信州を攻めてきた際、胡徳済は自ら兵を率いて防戦に当たりました。胡大海が援軍を率いて駆けつけると、胡徳済は彼と共に李明道の軍を挟撃し、李明道とその宣慰（せんい）であった王漢二（おう かんじ）を捕縛しました。

1362年、胡大海が蔣英（しょう えい）に暗殺されると、処州（しょしゅう）の降将である李祐之（り ゆうし）が、院判（いんはん）の耿再成（こう さいせい）を殺害して反乱を起こしました。さらに、張士誠（ちょう しせい）が浙東（せっとう）の混乱に乗じて、弟の張士信（ちょう ししん）を派遣して諸全（しょぜん）を攻撃させました。胡徳済は信州から救援に向かい、敵の隙を突いて諸全に入城しました。知州の欒鳳（らん ほう）や院判の謝再興（しゃ さいこう）らと共に各門を守備しました。夜半、敵の不意を突いて出撃し、張士信の陣営を分断して敵を破り、退却させました。この功績により、胡徳済は浙江行省参知政事（せっこうこうしょうさんちせいじ）に抜擢され、新城（しんじょう）に駐屯しました。

1365年、張士誠の将である李伯昇（り はくしょう）が軍を率いて進攻してきた際、胡徳済は新城を固守し、李文忠（り ぶんちゅう）に援軍を要請しました。李文忠が駆けつけると、胡徳済は出撃して李伯昇の軍を挟撃し、これを撃破しました。しかし、この時、胡徳済の部下の中に、密かに家族を新城に移住させた者がおり、李文忠は胡徳済がそれを指示したのではないかと疑いました。そこで李文忠は、その都事（とじ）であった羅彦敬（ら げんけい）を処刑し、胡徳済を戒めようとしました。この処置に対し、将士たちは怒り、胡徳済に訴えましたが、胡徳済は笑ってその不満を退けました。朱元璋は胡徳済を召し出して褒め称え、李文忠に対しては、将士の心を失ったことを叱責し、「胡徳済の度量は、お前には及ばない」と言いました。その後、胡徳済は浙江行省右丞（せっこうこうしょううじょう）に抜擢され、駿馬を賜りました。しばらくして、浙江行省左丞（せっこうこうしょうさじょう）に転じ、杭州（こうしゅう）に移鎮しました。

1370年、胡徳済は徐達（じょ たつ）に従い、定西（ていせい）に進軍しましたが、彼の軍は敗北しました。徐達は胡徳済の部将数名を処刑し、胡徳済自身は首枷をはめられ、南京に送還されました。しかし、洪武帝（こうぶてい）（朱元璋）は、胡徳済のこれまでの功績を考慮し、敗北の罪を赦免しました。胡徳済は都指揮使（としきし）として復帰し、陝西（せんせい）に駐屯しましたが、まもなく死去しました。彼の死後、その武勇と度量の大きさは、長く語り継がれました。

参考文献
* 『明史』巻133 列伝第21

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