滑稽

「滑稽」の語源と意味の変遷

「滑稽」という言葉は、現代日本語においては「おもしろおかしい」「ユーモラス」といった意味で使われます。しかし、その語源を辿ると、古代中国における意味合いとは大きく異なることがわかります。

古代中国における「滑稽」

古代中国では、「滑稽」は『史記』の「滑稽列伝」に登場する人物たち、特に淳于髠（じゅんうこん）に代表される、弁舌の巧みな人物やその様子を指していました。彼らは機知に富んだ言葉で人を惹きつけ、その弁舌の鮮やかさが「滑稽」と表現されたのです。この時点では、言葉に笑いの要素は含まれていませんでした。

『楚辞』や揚雄の『法言』にも「滑稽」の用例が見られますが、やはり弁舌の巧みさを表す言葉として使われています。例えば、『史記』に名を連ねる人物の中には、優孟（ゆうもう）や優旃（ゆうせん）のような俳優も含まれていました。彼らの、おどけた言動やウィットに富んだ表現が、聴衆を魅了したのです。

日本語における「滑稽」

日本においては、古代中国における「滑稽」の意味が転じ、笑いやユーモアを意味するようになりました。これは、古代中国における「滑稽」な人物たちの、ウィットに富んだ言動が、結果的に笑いを誘う要素を内包していたためと考えられます。彼らの滑稽なふるまいが、後世の人々にとって「おもしろおかしい」と解釈されるようになり、それが「滑稽」という言葉の意味に影響を与えたのです。

また、「滑稽本」というジャンルが生まれたことからも、この言葉が笑いやユーモアと結びついていることがわかります。

まとめ

「滑稽」という言葉は、古代中国においては弁舌の巧みさを表す言葉でしたが、日本では笑いやユーモアを意味する言葉へと変化しました。この変化は、言葉の持つ意味合いが、歴史的な背景や人々の解釈によって変化していくことを示唆しています。

関連項目

滑稽列伝

関連文献

栗山理一「滑稽の機構―史記と芭蕉―」『連歌俳諧研究』第30号、俳文学会、1966年。 NAID 130004963612。
https://doi.org/10.11180/haibun1951.1966.1
大室幹雄 『滑稽：古代中国の異人（ストレンジャー）たち』 評論社、1975年（のち、岩波書店〈岩波現代文庫〉、2001年12月 ISBN 4-00-600069-3（ISBN-13 978-4-00-600069-1））

外部リンク

『滑稽』 - コトバンク

https://kotobank.jp/word/%E6%BB%91%E7%A8%BD-583631

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