田楽

田楽（でんがく）

概要

田楽は平安時代中期に成立した日本の伝統的な芸能で、主に音楽と舞踊を融合させた形を持ちます。この芸能のルーツは、田植えの前に豊作を祈願するための田遊びにあるとされていますが、渡来文化の影響があるとも言われており、その正確な起源は不明です。田楽はもともと農耕に関連した儀礼の一環として行われ、仏教の影響を受けながら形式化されていきました。

専門的な集団である田楽座は地域の領主や神社などと関わるようになり、流鏑馬や相撲、王の舞のような神事に演目を組み込んでいきました。

特徴

田楽の特徴的なスタイルには、以下のような共通点が見られます：

• - びんざさらという楽器を用いる
• - 腰鼓などの特有の太鼓が使われるが、重視される音楽パフォーマンスにはあまり使われない
• - 風流笠といった華やかな被り物を着用
• - 踊り手が対向する形で編隊を組み、円陣を作り、入れ違いなどの動きを見せる
• - 緩やかで単純なリズムで踊られる
• - 神事であっても、舞踊の過程が重要視される
• - 王者の舞や獅子舞など、さまざまな祭礼の一部を形成することが多いです。

歴史

田楽に関する最古の文献は992年の『和泉大鳥社流記帳』ですが、その信憑性にはいくつかの疑問が指摘されています。その後も様々な記録が残され、998年の『日本紀略』には京都の松尾神社で行われた田楽の様子が記されています。

平安時代には、大江匡房が記した『洛陽田楽記』に見られるように、田楽が京都を中心に盛んに行われ、貴族たちに愛されました。特に1086年には「永長の大田楽」として多くの観衆が訪れるほどの熱狂がありました。この時期、田楽座が形成され、田楽法師と呼ばれる専門の芸人が登場しました。

中世には、田楽に演劇的要素が加わり、田楽能と呼ばれる新たなスタイルが生まれました。鎌倉時代の北条高時や室町時代の足利義持など、多くの権力者がこの芸能を支持しました。

近世から現代

江戸時代には一時的に田楽が衰退しましたが、大正末から戦後にかけて民俗芸能の研究が進み、各地の神事や祭礼に残された田楽の記録が集められるようになりました。現在では、舞踊系の田楽と、楽器を使った田はやし系の田楽に分かれており、それぞれが豊穣祈願や魔事退散を目的に行われています。

また、2009年現在では、24件の田楽が重要無形民俗文化財に指定されており、秋保の田植踊や那智の田楽はユネスコの無形文化遺産に登録されています。これにより、田楽は日本の伝統文化の重要な一部として、今なお受け継がれています。

田楽は日本の農耕文化と宗教的信仰が絡み合い、歴史を経て独自の発展を遂げた芸能であり、舞踊や音楽を通じて人々の思いを伝える重要な伝統芸能です。

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