能仁寺 (飯能市)

能仁寺（のうにんじ）

能仁寺は、埼玉県飯能市飯能に位置する曹洞宗の寺院で、山号は武陽山、そして本尊には毘盧遮那仏を祀っています。この寺の歴史は、文亀元年（1501年）に遡ります。当時、武蔵国高麗郡加治に住んでいた豪族、中山家勝が、名僧である曹洞宗通幻派の斧屋文達を招いて創建されました。最初は小さな庵でしたが、家勝が亡くなった後、天正元年（1573年）にその子、中山家範が父の菩提を弔うため、寺院を本格的に整えました。このようにして、能仁寺は中山家や黒田家の菩提寺としての役割を果たすことになります。

寺院の発展

宝永2年（1705年）、当時の常陸下館藩の大名であった黒田直邦が、13世住職の泰州廣基とともに寺の改築を行い、伽藍を完成させました。この改築により、能仁寺は雲水50人を抱え、七堂伽藍を持つ禅寺として繁栄を誇りました。

飯能戦争の舞台

慶応4年（1868年）5月23日、飯能戦争、すなわち戊辰戦争の場となりました。この戦いで、渋沢成一郎が指揮する振武隊が能仁寺に陣営を構えました。最初、彰義隊から離れた成一郎は、振武隊を結成し、隊員を集めましたが、最終的に官軍に攻撃され、寺はほぼ全焼してしまいました。成一郎は負傷しつつも逃げ延び、さらに戦い続けることになります。能仁寺の本堂は、昭和11年（1936年）に再建されました。

池泉回遊式蓬莱庭園

寺院の裏手には、桃山末期に作られたとされる池泉回遊式の蓬莱庭園があります。この庭園は、天覧山を背景とし、周囲の自然を引き立てる美しい景観を持っています。落ち着きのある庭は市指定の文化財であり、大正11年には名勝としても認定されました。面積はおおよそ1000平方メートルで、日本の名園百選にも選ばれています。

住職とその交友関係

31世住職の萩野映明（1940年 - 2016年）は、東京・谷中の玉林寺の住職の次男として生を受けました。報知新聞社で運動部記者を務めた後、永平寺で修行を経て1973年に能仁寺に入山し、1991年に住職に就任しました。彼は新聞記者時代からの親交を活かし、長嶋茂雄や王貞治、原辰徳など多くのスポーツ界の名士を寺に招いていました。このため、能仁寺は「スポーツ寺」とも呼ばれることがあります。

交通アクセス

能仁寺への訪問は、西武池袋線の飯能駅北口から国際興業バスに乗車し、「OH!!!・天覧山下」バス停で下車し、徒歩約1分で到着します。また、名栗・中沢・間野黒指方面行きのバスを利用して「市民会館・博物館」バス停で下車すると、徒歩約5分の距離です。JR八高線の東飯能駅西口からも同様のバスが利用可能ですが、西武飯能日高行きは通らないので注意が必要です。

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