能登 (船)

能登の歴史的背景

能登（のと）は日本の奈良時代に作られた船であり、特に761年に渤海への使者として重要な役割を果たしました。この年の10月、朝廷は渤海に使者を送ることを決定し、これに伴って能登が建造されたとされています。船の指揮は高麗の大山に託され、彼は渤海との軍事協定を結ぶ任務付きで選ばれましたが、残念ながらこの試みは失敗に終わりました。

船の航海と運命

天平宝字6年（762年）10月、能登は無事に本州に到達しました。しかし、大山はその後病に倒れ、佐利翼津に到着する前に亡くなってしまいました。大山の死後、能登は再び渤海の使者である王新福を乗せて北陸から出港することとなります。一度修理を施されたものの、送使や判官たちは航海を断念し、船師である板振鎌束が連れて行かれました。

その後、天平宝字7年（763年）春に、渤海からの使者は無事に帰還を果たしましたが、帰国の道中に突如として悪天候に見舞われ、能登号は日本海を漂流することとなります。船に乗っていた人々は、無事に帰国できるよう船霊に祈りを捧げ、もし成功した際には必ず朝廷に錦冠を奉納すると誓いました。

錦冠の授与

船に対する錦冠の授与は、758年に播磨・速鳥でも例があり、この慣習を船の乗組員も知っていたと考えられます。能登号は最終的に漂流の末、隠岐にたどり着き、天平宝字7年8月12日に朝廷から従五位下の位階を授けられました。約束の錦冠は特別な布地で作られ、紫の組紐が垂らされたものでした。

暴風の中の悲劇

能登号は帰国の途中で暴風に遭遇し、多くの船員を失いました。その際、船の指揮者である鎌束は、事件の責任を取る形で、船に乗っていた留学生とその関係者を呪われた存在だとし、海に投げ捨てるよう指示しました。結果的に、彼はその罪に問われ投獄されることになります。

一方、入唐学問僧の戒融は連れて行かれることはなく、彼はそのまま行動を共にしました。この出来事は、能登の航海における悲劇的な出来事を象徴するものとなっています。

結論

能登号は奈良時代における重要な船の一つであり、渤海との交流を示す歴史的な遺物として今なお語り継がれています。その航海の背後には多くの人々の努力と悲しみがあり、彼らの物語は日本の歴史の中で忘れられることはないでしょう。

もう一度検索