速鳥

速鳥（はやとり）：伝説の高速船

速鳥（はやとり）は、古代日本の『播磨国風土記』に記された伝説的な船の名前です。その驚異的な速さから名付けられたとされ、当時の人々の想像力をかきたてる存在でした。

『播磨国風土記』における記述

速鳥に関する記述は、『釈日本紀』に引用された『播磨国風土記』明石郡の条に見られます。それによると、仁徳天皇の時代、明石の地に巨大なクスノキがありました。その大きさは、日の出には淡路島を覆い、日の入りには難波の高津宮を隠すほどであったと伝えられています。

この巨木を伐採して船を建造したところ、その船は一楫で七つの波を乗り越えるほどの速さを誇りました。この驚異的な速さから、船は「速鳥」と名付けられたのです。速鳥は、明石から高津宮へと水を運ぶ役割を担いましたが、次第に速力が衰え、その役目を終えたとされています。

巨木伝承と速鳥の関連性

巨木伝承は、その大きさを誇張して表現していると考えられますが、『続日本紀』には播磨国の船として同名の船が登場します。このことから、速鳥という船が実際に存在した可能性も指摘されています（巨樹の項目も参照）。

速鳥が示唆するもの

速鳥の伝説は、古代日本の造船技術や航海技術、そして人々の自然に対する畏敬の念を反映していると言えるでしょう。また、その名前が示すように、速さに対する憧れや、技術革新への期待も込められていたのかもしれません。

まとめ

速鳥は、伝説の中に生きる船ですが、その物語は、古代日本の文化や技術、そして人々の精神性を垣間見ることができる貴重な手がかりとなります。伝説の高速船・速鳥は、今もなお、私たちの想像力を刺激し続けているのです。

参考文献
浅田芳朗『図説播磨国風土記への招待』柏書房、1981年9月、106-107,146-147頁。
『続日本紀 上巻』大日本文庫刊行会、1938年、474頁。

もう一度検索