脇方駅

脇方駅

脇方駅（わきかたえき）は、かつて北海道虻田郡京極町字脇方に位置していた、日本国有鉄道（国鉄）胆振線の鉄道駅（廃駅）です。国鉄が使用していた事務管理コードは▲131931でした。

歴史

この駅は、1920年（大正9年）7月15日に国有鉄道京極軽便線の終着駅として営業を開始しました。脇方駅が建設された最大の目的は、近くに位置していた倶知安鉱山で採掘される鉄鉱石を鉄道で輸送することにありました。一般駅として開業し、旅客と貨物の両方を取り扱っていました。

戦時中には、鉱山からの資源輸送という特需を受けて鉄道輸送の需要が増加しました。戦後もしばらくその活況は続き、年間およそ6万人に及ぶ旅客と、同じく年間約6万トンもの貨物が扱われるなど、駅は地域経済にとって重要な拠点として一定の繁栄を保っていました。

しかし、駅の存続にとって不可欠であった倶知安鉱山が1969年（昭和44年）10月31日に閉山を迎えると、状況は一変します。主要な貨物であった鉱石輸送が途絶えたことで、駅の取扱量は旅客、貨物ともに激減し、その存在意義は急速に薄れていきました。鉱山の閉山は、駅だけでなく地域全体に大きな影響を与えました。地域を支えていた郵便局は閉鎖され、子どもたちの学び舎であった小中学校もその歴史に幕を下ろしました。駅が廃止された時点では、この地に残っていたのはわずか5戸、8人の農家の方々だけだったと記録されています。駅は、鉱山閉山から約1年後の1970年（昭和45年）11月1日をもって、惜しまれつつ廃止されました。

年表

1920年（大正9年）7月15日：国有鉄道京極軽便線の京極駅から当駅までの区間が開通し、一般駅として開業。
1922年（大正11年）9月2日：路線の名称が京極線に改称されました。
1940年（昭和15年）：冬期間の除雪を効率化するため、流雪溝が設置されました。
1944年（昭和19年）7月1日：路線の所属が胆振線に変更・編入されました。
1948年（昭和23年）5月16日：脇方地区で発生した大規模な火災により、駅舎、機関庫、職員官舎などが類焼する被害を受けました。
1949年（昭和24年）2月：被災した駅舎などが再建され、新しい施設での業務が再開されました。
1969年（昭和44年）10月31日：駅の重要な輸送元であった倶知安鉱山が閉山しました。
1970年（昭和45年）11月1日：胆振線の脇方支線廃止に伴い、駅も営業を終了し廃止となりました。

駅の特徴

脇方駅は、駅名にも関連するワッカタサップ川と、白井川という二つの川に挟まれた中段の地形に位置していました。この地形的な特徴が、冬季の効率的な除雪を可能とする流雪溝の設置に適していました。1940年冬に設置された流雪溝は、北海道内でもかなり早い時期に取り入れられた先進的な設備であり、これにより冬期の除雪作業に必要な人員を大幅に削減することができました。

また、1948年（昭和23年）5月16日には、脇方地区を襲った大火により、駅舎をはじめ、機関車の整備を行う機関庫や職員の住居である官舎などが焼失するという大きな被害に見舞われました。しかし、地域と鉄道の復興への強い意志のもと、翌1949年（昭和24年）2月には新しい駅舎などが完成し、鉄道輸送が再開されました。この火災からの早期復旧は、当時の地域の活力を示す出来事と言えるでしょう。

駅名の由来

駅名の「脇方」は、この地の地名から名付けられました。この地名は、地域を流れるワッカタサップ川のアイヌ語名「ワッカタサㇷ゚（wakka-ta-sap）」の上半分の音に漢字を当てて生まれたとされています。

アイヌ語研究における通説では、「ワッカタサㇷ゚」の語義は「水を・汲みに・下る処」と解釈されています。これは、川辺に水を汲みに下る場所があったことを示唆していると考えられます。しかし、アイヌ語研究者の山田秀三氏は、この語義について別の可能性を提示しています。山田氏によれば、「サㇷ゚（sap）」という言葉が、一般的に「出る」や「下る」を意味する「サン（san）」の複数形として使われる場合があることを踏まえると、「ワッカタサㇷ゚」は「水が・そこで・ごちゃごちゃ流れ出る」のような、複数の沢や湧水が入り組んで流れ出す地形を表しているのではないか、と推測しています。このように、駅名となった地名の由来には、地域の自然景観とアイヌ文化が深く結びついた、興味深い語源が隠されています。

駅周辺と現況

駅があった場所の周辺には、現在、北海道道784号黒橋京極線が通っています。この道道は、脇方地区を起点としており、かつて駅が存在した名残をとどめているかのようです。

隣の駅

日本国有鉄道 胆振線（廃止時点）
京極駅 - 脇方駅

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