脊梁 (松本清張)

脊梁（せきりょう）

松本清張の短編小説『脊梁』は、1963年12月に『別册文藝春秋』に掲載され、後に1966年の短編集『ベイルート情報』に収録された作品です。この小説は、恋人間の疑念や信頼の影を巧みに描写し、心理的な葛藤を浮き彫りにしています。1982年にはテレビドラマとしても放映され、多くの人々に親しまれることとなりました。

あらすじ

物語の中心となるのは川田トモ子という女性と、彼女の許婚である村尾宗一です。ある晩、トモ子が宗一の部屋に泊まった際、夜中に目を覚ますと、宗一が不在であることに気づきます。時計を見ると、時間は1時25分。この時、トモ子は不安な気持ちを抱えつつも、再び夢の中へと戻ります。

しかし、次に目を覚ました時、すでに時計は2時40分を指していました。宗一がトイレに行っていたと説明しますが、その後、同じ町内で起こった凄惨な殺人事件が二人の運命を大きく変えることになります。下井竜右衛門夫婦がメッタ刺しにされるというショッキングな事件が発生し、トモ子は宗一の一時的不在が事件と関係していないのかという不安に駆られます。

宗一はトモ子の不安を和らげるため、彼女にこの件を他言しないよう頼みます。トモ子もそれに同意しますが、事態は急展開を迎えます。宗一の飲み仲間である倉岡文平が容疑者として逮捕され、何と文平は宗一が共犯であると証言したのです。これにより、宗一は警察に連行され、疑念が一層深まりました。

トモ子の証人としての葛藤

宗一は、事件当夜はトモ子と一緒にいたと主張し自らの無実を訴えます。トモ子にとっては、宗一のアリバイを証明することが唯一の救いとなるのですが、彼女には一つのジレンマが存在しました。宗一の不在を誰にも話すべきかどうかという葛藤です。警察や検事の微妙な追及を恐れるトモ子は、この重大な問題について沈黙を貫くことを選びます。

年月が経つにつれ、裁判は長引き、トモ子は身内の心配をあおられながらも、宗一への思いを捨てきれずにいます。拘置所にいる宗一への差し入れを続ける彼女は、弁護士である小松と須山による無罪の訴えに希望を見いだし、励まされ続けます。しかし、トモ子の苦労の先には予想外の困難が待ち受けていました。

テレビドラマ化

1982年には、この物語を基にしたテレビドラマ『松本清張の脊梁』が日本テレビ系列の「火曜サスペンス劇場」枠で放送され、多くの視聴者を惹きつけました。脚本家一色伸幸のデビュー作であり、ファンの間で特に人気を博し、視聴率は21.4％を記録しました。このドラマでは、池上季実子が川田トモ子を、清水健太郎が村尾宗一を演じ、その他にも多くの実力派俳優がキャストとして名を連ねています。

まとめ

『脊梁』は、松本清張が描く心理的なサスペンスが詰まった作品で、愛と疑念が交錯する物語です。物語の中で、トモ子が直面する選択は、読者によって新たな考察を生む要素となっており、また、ドラマ化によって新たな形で人々に支持されることとなりました。この作品は、今なお多くの人に思いを馳せる機会を提供していると言えるでしょう。

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