白質

白質とは

白質（はくしつ、英語: White matter）は、中枢神経系（CNS）における有髄神経線維が集まった領域です。これまで、白質は単なる受動的な構成要素として見なされてきましたが、最近の研究によって、学習や脳のさまざまな機能に対する重要性が明らかにされています。特に、白質は活動電位の分布を調整し、異なる脳領域間の情報伝達を促進するリレーとしても機能します。

白質の構造

白質は、脳内の灰白質領域を結びつける神経繊維の束から成り立ち、神経インパルスの伝達を担っています。有髄線維を囲む髄鞘は電気的な絶縁体として作用し、電気信号が軸索を通過する際の速度を速めます。脳梁と呼ばれる構造は、左右の大[[脳]]半球をつなぐ大きな白質の束であり、他の白質構造とともに情報伝達の中心を形成しています。SchüzとBraitenbergによると、「粗い法則」で、神経線維の長さはその本数に反比例することが述べられています。また、非高齢者の白質においては血管の割合が1.7%から3.6%であることも知られています。

灰白質との関係

脳の別の主要構成要素は灰白質（げいはくしつ）であり、神経細胞が集中している領域です。灰白質は神経細胞の体が多く存在するため、実際には毛細血管によってピンクがかった色を呈します。一方、黒質と呼ばれる脳内の構造は、メラニンの含量が高く、暗い色合いが特徴です。

白質の位置

白質は脳の奥深くや脊髄の表層を占めており、様々な灰白質の集合体がその中に存在しています。例えば、大[[脳]]基底核や脳幹の核は灰白質の重要な部分です。また、小脳も白質と灰白質を有し、特に小脳白質は「arbor vitae」として知られています。

有髄軸索の長さ

白質における有髄軸索の長さは、性別によって異なります。例えば、20歳の男性の有髄線維の総延長は約176,000kmですが、女性は149,000kmにとどまります。年齢が進むと、この長さは約10年ごとに10%減少し、80歳時点では男性が97,200km、女性が82,000kmです。特に細い線維の喪失が主な要因とされています。

白質の機能

白質の主な機能は、神経信号を迅速に伝達することです。そのためにミエリンと呼ばれる脂肪質の物質が重要な役割を果たし、ほとんどすべての長い神経線維に存在します。白質は20代でその発達のピークを迎える灰白質とは異なり、中年期以降にピークを迎えます。

白質に関する研究

白質が影響を受ける疾患として、多発性硬化症（MS）が挙げられます。MSでは、白質が炎症によって損なわれるため、注意が必要です。また、アルコール使用障害も白質容積の減少に関連しています。加齢に伴って白質は希薄化し、これは様々な神経変性疾患とも関連しています。認知的な障害、うつ病、脳血管性認知症などといった症状がMRIでの白質の病変とリンクしていることが示唆されています。

白質の体積

白質の体積が減少すると、注意力や記憶、実行機能、さらには学術成績にも影響を及ぼす可能性があります。ただし、白質の体積は神経可塑性によって変化し、他の脳領域の代償機能の一因に過ぎない面もあります。定期的な有酸素運動が白質の完全性を高める可能性があることも文献で報告されています。

イメージング技術

白質の詳しい研究には、MRIの拡散テンソルイメージング（DTI）を用いた手法が広く用いられています。特に、運動スキルの習得が白質体積の変化に寄与することを示した研究があり、新たな知見を提供しています。これらの研究は、運動学習と白質の関係を狭め、神経ネットワークの理解を深める可能性があります。

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