腐蛆病

腐蛆病（ふそびょう）

腐蛆病とは、ミツバチの幼虫に特有の伝染病です。この病気は、家畜伝染病予防法に基づく法定伝染病に分類されており、多くの養蜂家にとって注意を要する存在です。腐蛆病は主にアメリカ腐蛆病菌（Paenibacillus larvae subsp. larvae）およびヨーロッパ腐蛆病菌（Melissococcus plutonius）によって引き起こされます。

アメリカ腐蛆病とヨーロッパ腐蛆病

アメリカ腐蛆病は特に2日齢以内の幼虫が感染しやすく、その原因となる芽胞を含む王乳や蜜を摂取することで発病します。発症した幼虫は1～5日後に死亡する危険があり、3日齢以降は発症しないことが特徴です。一方、ヨーロッパ腐蛆病は、主に別の病原菌によって引き起こされ、こちらも養蜂が行われる国々で一般的に見られる病気です。

この病気は特に幼虫の腸内で芽胞が発芽し、それが中腸に侵入して増殖し血体腔へと広がることによって致命的な結果を招きます。そのため、迅速な診断と対策が必要です。

診断法と予防策

アメリカ腐蛆病の診断には、Michael培地、HS培地、J培地などを用いて菌を分離する方法が一般的です。また、Holstのミルクテストも利用されます。これに対して、ヨーロッパ腐蛆病の診断にはBaileyの培地が使用されます。これらの検査を通じて早期に病気を発見し、対策を講じることが重要です。

予防策としては、エチレンオキサイドを用いたガス燻蒸によって巣箱を消毒する方法が有効とされています。さらに、マクロライド系抗生物質が感染防止に効果的であることが示されていますが、抗生物質を使用しない防除策に関する研究も進行中です。特に中華人民共和国では、テトラサイクリン系の抗生物質が使用されることがあり、その影響で蜂蜜に残留する可能性や病原体の耐性獲得が懸念されています。

感染時の対応

万が一感染が確認された場合には、感染した巣箱や蜂群を焼却することが推奨されており、さらに養蜂道具の適切な消毒が必要です。これにより、病気の拡大を防ぐことが可能です。

その他の関連病

ミツバチの幼虫に影響を及ぼす他の疾病としては、チョーク病、バロア病、サックブルード病などがあります。これらの病気も腐蛆病と同様に、幼虫や成虫に深刻な影響を与える可能性があります。

参考文献

1. 清水悠紀臣ほか編『動物の感染症 = Infectious diseases of animals』近代出版、2002年。ISBN 4874020747。
2. 『明解獣医学辞典』チクサン出版社、1991年。ISBN 4885006104。

このように、腐蛆病は養蜂において重大な脅威となっていますので、早期の対策と適切な予防が重要です。

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