腕挫腹固

腕挫腹固（うでひしぎはらがため）

腕挫腹固は、柔道や総合格闘技などで用いられる関節技の一種で、相手の腕を自分の腹部または胸部で圧迫して極めるアームロックです。講道館や国際柔道連盟 (IJF) で正式名として採用されています。

概要

腕挫腹固は、寝姿勢、立ち姿勢のいずれの状態でも極めることができます。しかし、2018年以降の柔道国際ルールでは、安全面への配慮から立ち姿勢での関節技が制限されており、立ち姿勢で極めることは以前より困難になっています。

相手と同じ向きで極める場合と、互いに逆向きで極める場合があります。また、うつ伏せの相手に極めることが多いですが、仰向けの相手にも極めることが可能です。

基本形は、相手の手首を掴み、同じ側の腕の肘を自分の腹または胸で圧迫するようにして極めます。この圧迫により、相手の肘関節に強い負荷をかけ、タップを奪います。

柔道や古流柔術などの演武では、立ち関節技として披露されることがあります。かつて堀辺正史が主催した骨法のイベントでも演武で披露されました。実際の格闘技の試合でこの技が決まることは稀ですが、過去にはリングスでヴォルク・ハンがこの技でエスケープポイントを獲得した事例があります。

変化

腕挫腹固には、基本形以外にも様々なバリエーションが存在します。例えば、相手の背後から極める腕挫腹固も存在します。これは、相手の背後から腕を抱え込み、腹部で肘を圧迫するものです。

肩抑え体固腕挫

肩抑え体固腕挫は、うつ伏せの相手と逆向きになった状態で、相手の右手首を自分の左腋で挟み、腹で相手の右肘または右上腕を圧迫して極める腕挫腹固の一種です。腋で手首を固定することで、より強固に肘を極めることができます。

試合での実例

国際柔道連盟（IJF）の試合では、腕挫腹固が実際に使用される場面も見られます。

例えば、グランプリ・ザグレブ2018の男子66kg級1回戦では、ドミトリー・ホーネット（ベラルーシ）がエマッド・ベース（モロッコ）に対し、肩車からの移行で腕挫腹固を極め、勝利を収めました。この試合映像は、『IJFレフェリング・アンド・コーチング・セミナー2019』で教材として使用され、効果的な関節技の例として紹介されています。

腕挫体固

腕挫体固は、崩袈裟固などで相手を抑え込んでいる際に、相手が逃れようと腕を差し入れてきた場合、その腕を伸ばして自分の腹で相手の肘を抑えて極める腕挫腹固の一種です。腕挫腋固や腕挫脚固にも腕挫体固と呼ばれる技が存在します。

分類と名称

柔道界では、講道館が固め技の分類・名称を制定する1985年以前は、「腹固め」や「腕挫腹固」という名称は、現在でいう腕挫脚固の基本形を指すことが多くありました。柔道以外の格闘技界では、その後も同様の用法が用いられることがあります。

このように、腕挫腹固は、柔道や総合格闘技において、歴史のある重要な関節技の一つであり、その技術体系は、現在も進化し続けています。

脚注

脚注1] 柔道チャンネル - 腕挫腹固: [https://www.judo-ch.jp/technique/katame/ude/hishigi_haragatame/

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