腫瘍ウイルス

腫瘍ウイルス：がんとウイルスの関係

腫瘍ウイルスとは、がんの発生に関与するウイルスです。これらは、DNAウイルスやレトロウイルスなど様々な種類があり、細胞に感染し、プロウイルスとしてゲノムに組み込まれることで、がん遺伝子を活性化させ、腫瘍形成を引き起こします。

[腫瘍]]ウイルスの研究は、1911年、ペイトン・ラウスによるニワトリの肉腫を引き起こす濾過性病原体（後にラウス肉腫ウイルス]と命名）の発見に端を発します。この発見は、がんの原因が[[ウイルスである可能性を示唆する画期的なものでした。ラウスは、この業績により1966年のノーベル生理学・医学賞を受賞しています。RSVはRNAレトロウイルスであり、そのがん遺伝子は、肉腫(sarcoma)から名付けられたsrc遺伝子です。驚くべきことに、このsrc遺伝子はウイルスだけでなく、宿主細胞のゲノムにも存在することが判明し、がん遺伝子の起源と機能に関する新たな理解を促しました。ウイルス由来のsrc遺伝子をv-src、細胞由来のものをc-srcと区別して表記します。

多くの場合、がん遺伝子は細胞の増殖や分化を制御する遺伝子に関係しており、本来は宿主細胞の染色体の一部であったものが、ウイルス感染によって細胞外に放出され、他のウイルスと組み合わさって腫瘍ウイルスを形成すると考えられています。

ヒトのがんに関連する主な腫瘍ウイルス

いくつかのウイルスは、ヒトのがんとの強い関連性が明らかになっています。国際がん研究機関(IARC)は、これらのウイルスの発がん性リスクを分類しています。

IARC発がん性リスク評価: Type1（発癌性がある）

EB[ウイルス]: バーキットリンパ腫など
[B型肝炎ウイルス]: 肝細胞がん
[C型肝炎ウイルス]: 肝細胞がん
ヒトパピローマウイルス16型(Human papillomavirus type 16; HPV-16): 子宮頸がん
ヒトパピローマウイルス18型(Human papillomavirus type 18; HPV-18): 子宮頸がん
ヒトTリンパ球性ウイルス1型(HTLV-1): 成人T細胞白血病

IARC発がん性リスク評価: Type2A（おそらく発癌性がある）

ヒトパピローマウイルス31型(Human papillomavirus type 31)
ヒトパピローマウイルス33型(Human papillomavirus type 33)
カポシ肉腫関連ヘルペス[ウイルス]: カポジ肉腫

IARC発がん性リスク評価: Type2B（発がん性が疑われる）

ヒト免疫不全ウイルス2型(Human immunodeficiency virus type 2; HIV-2)
ヒトパピローマ[ウイルス]

IARC発がん性リスク評価: Type3（発癌性は不明 - 現在検証中）

D型[肝炎]][[ウイルス]
* ヒトT細胞白血病ウイルス2型(Human T-cell lymphotropic virus type II)

オーラルセックスと口腔がん・咽頭がんのリスク

近年、性行為と特定のがんとの関連性が注目されています。特に、ヒトパピローマ[ウイルス]感染とオーラルセックスとの関連性が研究されています。複数の研究で、HPV感染者との予防手段を用いないオーラルセックスは、口腔がんや咽頭がんのリスクを高める可能性が示唆されています。例えば、ある研究では、口腔がん患者の36%がHPVに感染していたのに対し、健康な対照群ではわずか1%しか感染していませんでした。また別の研究では、生涯のパートナー数と咽頭がんリスクの間に相関関係が見られ、パートナー数が多いほどリスクが高まることが示されています。

これらの研究結果は、HPV感染の予防と安全な性行為の重要性を改めて示しています。 今後も、ウイルス感染と様々ながんとの関連性について、さらなる研究が続けられるでしょう。

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