腰掛稲荷神社

腰掛稲荷神社：将軍も腰掛けた歴史ある社

東京都文京区目白台に鎮座する腰掛稲荷神社は、創建年代こそ不明ながら、江戸時代初期から人々の信仰を集めてきた歴史深い神社です。その歴史は、徳川将軍とのかかわりから始まります。

当時、護国寺はまだ存在せず、この地は周囲を見渡せる見晴らしの良い場所でした。そして、座るのにちょうど良い大きさの大木の切株もあったと言われています。

伝えられる話では、江戸幕府初代将軍徳川家康、あるいは三代将軍徳川家光が鷹狩の際にこの地を訪れ、その切株に腰掛けて景色を眺めたとされています。そして、そこに祀られていた稲荷の小祠に参拝し、立ち去ったと言われています。

将軍が訪れた場所という事実は、幕府にとって重要な意味を持ちました。「将軍の縁の地」となったこの場所は、幕府によって保護されることとなり、切株は竹矢来で囲まれ、不敬行為を防ぐ措置が取られたとされています。

しかし、時の流れとともに切株は朽ち果ててしまいました。それでも、この地と将軍とのゆかりを後世に伝えるため、近隣の村人たちは稲荷の小祠を整備し、「腰掛稲荷神社」として祀るようになりました。当時は修験道当山派の修験者たちが管理をしていたと記録に残されています。

その後、昭和6年（1931年）には専任の神職が置かれ、社務所が設けられました。この社務所は、特徴的な建物として知られています。実は、著名な画家である松岡映丘の画室を移築したものであるという歴史も持っています。

現在では、地域住民の信仰の拠り所として、また歴史と文化を感じさせる場所として、腰掛稲荷神社は大切に守られています。境内には、かつて将軍が腰掛けた切株の面影はないものの、その歴史を伝える由緒ある神社として、文京区の文化遺産の一つとして存在感を示しています。静かな境内には、歴史の重みと、人々の信仰の深さを感じることができます。

交通アクセス

最寄りの駅は、東京メトロ有楽町線・護国寺駅です。駅から徒歩で約7分の距離にあります。

氏子地域

腰掛稲荷神社の氏子地域は、文京区目白台一丁目の一部、二丁目、三丁目の一部に及びます。具体的な範囲は、文京区役所の発表に基づいて確認することができます。

参考文献

* 内海一紀 編『文京区神社誌』文京区神社総代会、1988年

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