腸よ鼻よ

腸よ鼻よ（ちょうよはなよ）

漫画家・島袋全優氏が自身の難病である潰瘍性大腸炎との壮絶な闘病生活を赤裸々に、しかし持ち前の強烈なユーモアとギャグを交えて描いたエッセイ漫画作品。ウェブコミック配信サイト『GANMA!』にて、2017年6月30日から2023年4月14日まで、隔週金曜日に更新され人気を博した。KADOKAWAより単行本も刊行されている。

概要

プロの漫画家を目指し、学生として日々を送っていた作者が突然、指定難病である潰瘍性大腸炎と診断されたことから物語は始まる。入退院を繰り返し、手術や様々な治療に立ち向かう自身の経験を基に、病気の辛さや医療現場の実情、そして周囲の人々との関わりを、時にシリアスに、時に抱腹絶倒のギャグを織り交ぜながら綴っていく。作者自身の体調不良による緊急入院も度々発生し、それが「取材」と称して作品に反映されるなど、現実と地続きの描写が特徴である。

その赤裸々かつポジティブな視点と、困難を笑いに変える力強い表現が高く評価され、2019年には第5回次にくるマンガ大賞Webマンガ部門で3位に選出された。

物語は、大腸を全摘出した現在の作者がバーで隣り合わせた客に自身の経験を語る形式で進行し、主に学生時代の闘病エピソードが回想として描かれる。現在の作者はバブル期を彷彿とさせる華やかな姿で、学生時代の作者はお下げ髪の少女として描かれ、両者の対比もユニークな点である。

主な登場人物

本作を彩るキャラクターたちは、作者自身とその家族、そして医療関係者を中心に描かれる。それぞれが個性的で、時に壮絶な現実の中に温かさや笑いをもたらす存在となっている。

島袋 全優: 本作の主人公であり作者本人。沖縄県出身の女性漫画家。闘病する学生時代と、経験を語る現在の姿が登場する。
S先生: 転院先で全優を診る医師。眼帯に髭という武人のような風貌で、厳しさの中にも患者への優しさを持つ。
ドクターZ: 大腸全摘出という大きな決断をした全優の手術を担当。多忙で頼りなく見える一面もあるが、患者に寄り添う心優しい医師。
ドクターA: 難治性瘻孔の担当医。大学病院の准教授で、表情の変化に乏しいが、チームを率いて治療に当たる。
家族: 全優の病気を深く案じる母、自身の不幸体質を気にする父、協力的で仲の良い兄、全優を溺愛する姉、「第六感」が鋭い沖縄弁の祖母など、個性豊かな面々が作者を支える。
医療関係者: 誤診をした最初の担当医、謙遜しつつ鋭いツッコミを入れる研修医の山田先生、ストーマケアをデスゲーム風に教える看護師クデケン、麻雀好きで自由な看護師マタヨシなど、印象的なキャラクターが登場する。
編集部: エヴァのようなシルエットでネームを食らう初代担当編集M氏、山口県の布で顔を隠した二代目担当編集K氏など、漫画家としての道を支える存在も独特な描写で描かれる。
その他の人々: 全優の腸を気遣うバーのマスター、バーで話を聞く米兵らしきボブ、全優にチャンスをもたらした友人スーさんなどが物語に関わる。

書誌情報

島袋全優『腸よ鼻よ』KADOKAWAより全10巻が刊行されている。

1. 2019年9月13日発売、ISBN 978-4-04-735777-8
2. 2019年11月29日発売、ISBN 978-4-04-735851-5
3. 2020年6月30日発売、ISBN 978-4-04-736172-0
4. 2021年3月4日発売、ISBN 978-4-04-736511-7
5. 2021年9月9日発売、ISBN 978-4-04-736779-1
6. 2022年3月10日発売、ISBN 978-4-04-736956-6
7. 2022年9月15日発売、ISBN 978-4-04-737195-8
8. 2023年3月16日発売、ISBN 978-4-04-737427-0
9. 2023年8月18日発売、ISBN 978-4-04-737619-9
10. 2023年9月22日発売、ISBN 978-4-04-737620-5

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