腹ぺこブッチ

トムとジェリー：腹ぺこブッチのドタバタ劇

1954年8月14日に劇場公開された、トムとジェリーシリーズの一作品『腹ぺこブッチ』（原題：Baby Butch）は、食いしん坊な野良猫ブッチの珍騒動を描いた、笑いとスリルに満ちた短編アニメーションです。監督はウィリアム・ハンナとジョセフ・バーベラ、製作はフレッド・クインビーが務め、軽快な音楽はスコット・ブラッドリーが担当しました。

物語は、ゴミ箱を漁って食料を調達するブッチから始まります。イワシや牛肉の缶詰、飲み残しのジュースなど、あり合わせのものを巧みに手に入れるブッチのたくましさは、見ている者を思わず引き込みます。しかし、今日のターゲットはゴミ箱だけではありません。彼の視線は、トムの家のミルクや骨付きハムへと向けられていました。

しかし、トムの家の侵入は容易ではありません。タイミングを逸したブッチは、別の作戦を思いつきます。それは、「かわいそうなみなし子」を装って、トムの家に潜入すること。道端に捨てられていたワイシャツをオムツのように巻き付け、壊れたベビーベッドに寝そべることで、完璧な「みなし子」を演じきります。

まんまと作戦は成功し、ブッチはトムの家に侵入することに成功します。「かわいそうな赤ちゃん」に同情したトムは、ミルク入りの哺乳瓶をブッチに与えます。しかし、ブッチは赤ちゃん向けのミルクなど飲む気はなく、すぐにミルクを吐き出してしまいます。それでも、正体がバレるわけにはいかず、しぶしぶミルクを飲み続けるブッチの姿は、滑稽でユーモラスです。

トムが不在の隙を狙って、ブッチは冷蔵庫にある骨付きハムを盗もうとしますが、そこにはジェリーが待ち構えていました。ジェリーもまた、そのハムを狙っていたのです。さらに、ブッチを赤ちゃんだと信じ込んでいるトムが頻繁に世話を焼くため、ブッチはハムにありつくことができません。こうして、トム、ジェリー、ブッチの三者による、骨付きハムを巡る壮絶な争奪戦が繰り広げられます。

ブッチは、トムとジェリーの目を盗んでハムを奪おうとしますが、なかなかうまくいきません。その間にも、トムとジェリーは、ブッチの策略に気づき始めます。そして、トムとジェリーは、一時的に協力してブッチからハムを守ることを決意します。しかし、ブッチはトムとジェリーが争っている間に冷蔵庫にあるすべての食料を盗み出し、乳母車に乗って逃亡を図ります。

しかし、ジェリーが乳母車の扉を閉めるのを妨害したことで、ブッチは盗んだ食料を取り戻されてしまい、トムの家に追い出されてしまいます。

一方、仲直りしたトムとジェリーは、残りのハムを仲良く分け合うことにします。そこへ、いつの間にかブッチが現れ、自分にもハムを分けてほしいと懇願します。トムは仕方なく、ブッチにもハムを分け与えることにしますが、ブッチは策略家でした。彼はハムを小さく切って食べるふりをしながら、実は一番大きな部分を独り占めしていたのです。トムとジェリーはブッチの策略に気づきますが、既に手遅れでした。ブッチはハムを独り占めし、満面の笑みでその場を去っていくのでした。

この作品は、1964年から1990年代頃まで、TBS系列を中心に日本のテレビで繰り返し放映され、多くの視聴者に愛されてきました。トムとジェリー、そしてブッチの個性豊かなキャラクターと、テンポの良いストーリー展開は、世代を超えて楽しめる魅力に溢れています。

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