膳夫

膳夫 (かしわで) とは

膳夫とは、宮中で大王の食事の準備を担当する重要な役割を持つ伴であり、特に食器や食材の扱いに特化した職業を指します。この言葉の由来は「カシハデ」であり、これは「食器を扱う者」という意味です。古代の日本において、「カシハ」は酒や食物を盛るための容器として用いられていました。また、「で」は「手」を意味し、物事をする人を示しています。さらに、供応や酒宴の際には、柏手を打つことで膳の催促を行っていたことから、この役割名が生まれたとも言われています。

歴史的背景

膳夫に関する最古の記録は、『古事記』に見られます。この中では、大国主神が櫛八玉神を膳夫として天の御饗を奉納する話が伝えられています。櫛八玉神は祝いの言葉を述べた後、海の底に潜り、粘土を採取し、それで多くの平たい皿を作成しました。さらに、海草の茎を使って火鑚臼を、また別の茎で火鑚杵を作り、魚料理を献上したという神話が描かれています。これにより、膳夫の重要性が古くから認識されていたことがわかります。

膳夫の役割

『日本書紀』には、景行天皇の熊襲討伐の際のエピソードがあり、膳夫が酒杯を失念したことで「浮羽」という地名が生まれたとされています。この話は、膳夫の業務の影響が地名にまで及んでいることを示しています。

そして、膳夫は大化前代の制度下で、各地に設置された膳部という組織の一員として、天皇や朝廷の食事に奉仕しました。このように、膳夫は食事の準備だけでなく、さまざまな儀式や祭祀においても重要な役割を担っていたのです。

律令制においては、膳夫は宮内省の大膳職や内膳司に所属し、正式な組織の一部としてその業務を行なっていました。『高橋氏文』には、膳夫の装束や料理、祭祀に至るまで、彼らの労働の様子が詳細に記されています。

膳夫の存在は、単に食事の提供だけでなく、古代日本の文化や社会のあり方にも深く関わっています。膳夫が行う作業や責任は、当時の人々にとって重要であり、食事は文化や礼儀を表現する手段でもありました。

このように、膳夫という存在は歴史を通じて、食文化や祭事における不可欠な役割を果たしてきました。膳夫の業務は、単なる食事作りを超えて、社会全体の秩序や文化の一端を支えていたのです。

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