膳巴提便

膳 巴提便（かしわで の はすひ）

膳巴提便は、生没年は明らかでないが、6世紀前半に存在したヤマト王権に属する豪族である。彼の姓は臣で、この時期の政治や社会において重要な役割を果たしていたと考えられている。具体的な記録は少ないが、彼に関連する興味深い物語が『日本書紀』に記されている。

百済への派遣と悲劇の物語

膳巴提便は、欽明天皇6年の3月、推定545年に百済に派遣された。この際、彼は家族を伴って半島に向かうことを決定した。だが、この選択が彼とその家族に悲劇的な運命をもたらすこととなった。

記録によれば、彼が百済の海浜で夜を過ごした際、日が暮れる頃に小さな子供が行方不明になってしまった。父である巴提便は、子供を探し続ける中で大雪に見舞われ、翌朝ようやく虎が出現した足跡を発見した。これは非常に危険な状況であった。

彼は刀と甲冑を身に着け、虎が潜む可能性のある場所である巌岫（いわおのくき＝岩の洞穴）を思い出し、そこで子供を救おうと試みた。その際、虎と対峙することとなり、命がけの戦いが始まった。

虎との壮絶な戦闘

虎は巴提便に向かって襲いかかり、口を開けて彼を飲み込もうとした。しかし、彼は冷静さを保ち、すかさず左手で虎の舌をつかみ、右手で突き刺して仕留めることに成功した。その後、皮を剥ぎ取り、無事に帰還したという。この一連の出来事は、勇敢さと家族への愛情を物語るものとなった。

巴提便は、帰国後にこの出来事を朝廷に報告したと伝えられているが、その後の彼の事績については詳細な記録が残っていない。これが彼の人生のピークだったのか、あるいはその後の活躍は別の形で続いたのかのいずれも不明である。

参考文献と関連項目

彼に関する情報は主に以下の資料から得られている。『日本書紀』（三）は1994年に岩波文庫から、また『日本書紀』全現代語訳（下）は1988年に講談社学術文庫から出版された。さらに、古代日本氏族に関するデータを網羅した『日本古代氏族事典』には、膳巴提便に関する基本情報が掲載されている。

彼にまつわる興味深い関連項目として、飛鳥時代以前の人物一覧や、磐鹿六鴈（いわかむろのかり）などが挙げられる。また、稲荷山古墳出土の鉄剣にも「半弖比」という同名の人物が記されており、時代背景において興味深い考察を提供している。

膳巴提便の武勇伝は、古代日本の文化や信仰における人々の記憶に刻まれるものである。彼の勇気ある行動は、多くの人々にとって模範となり、時代を超えて語り継がれることだろう。

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