臨川寺 (長野県上松町)

寝覚山 臨川寺

臨川寺は、長野県木曽郡上松町にある臨済宗妙心寺派の寺院です。寝覚山を山号とし、14世紀に関山慧玄によって開山されたと伝えられています。木曽川の渓谷美を誇る寝覚の床に隣接し、古くから多くの人々に親しまれてきました。

歴史

臨川寺の創建は14世紀に遡ると考えられていますが、記録が乏しいため正確な年代は不明です。1624年、尾張藩初代藩主の徳川義直が木曽代官の山村良勝に命じ、甲斐の恵林寺から鐡船宗毘を招いて中興開山としました。しかし、別の資料では1648年に鐡船宗毘を開山として中興されたとされています。当初は大本山妙心寺の直末でしたが、後に定勝寺の一山となりました。

江戸時代には、尾張藩主が参勤交代の際に立ち寄る場所として、また、一般の旅人にとっても休憩所として利用され、境内には多くの建物が立ち並んでいました。特に、臨川寺から眺める寝覚の床は絶景とされ、多くの文人墨客が訪れました。沢庵宗彭、大淀三千風、鈴木重武、三井弘篤、森鴎外、島崎藤村、若山牧水など、数々の著名人が臨川寺を訪れ、その風景を詩歌や文章に書き残しています。

1863年には火災により多くの建物を焼失しましたが、弁天堂は残りました。その後、明治時代には明治天皇や昭和天皇をはじめとする皇族が訪れています。1884年には木曽川の洪水で被害を受けた樹木の植え替えが行われ、1923年には寝覚の床が国の史跡名勝天然記念物に指定されました。1950年には上松町の大火で小学校と中学校が全焼した際に、臨川寺は所有地を提供しています。

境内

現在の境内には、本堂、庫裏、望床亭などがあります。1998年の下水工事の際に山門の礎石が発見され、かつて屋根付きの門柱があったことがわかっています。

本堂

庫裏

望床亭

三徳稲荷

山門跡

方丈：1971年に再建された。

弁財天堂：1712年に尾張藩主の徳川吉通が建立した、上松町で最も古い建築物。

浦島堂：木曽川を見下ろす大岩の上に建つ、浦島太郎伝説ゆかりの堂。かつては弁天社であった。

寺宝

臨川寺には、以下のような寺宝が伝えられています。

文殊菩薩像
弁財天像
明堂禅師図
臨川寺図
木曾八景の版木
白隠禅師達磨図

臨川寺宝物館

1964年に開館した宝物館では、浦島太郎の釣竿と伝えられる物や、近世の民具などが展示されています。

石碑・歌碑

境内には、歴史上の人物や出来事を記念した石碑や歌碑が点在しています。

三村道益の碑
方壺山人留跡碑
明治天皇記念碑
戦没者慰霊碑
中国殉難者供養塔
句碑
烏丸光栄の歌碑
貝原益軒の歌碑
* 近衛摂政の歌碑

浦島太郎伝説

臨川寺には、浦島太郎伝説が伝えられています。

『寝覚浦嶋寺略縁起』によれば、浦島太郎は竜宮城から玉手箱と弁財天像、万宝神書を持って帰り、木曽川の美しい風景に魅せられてこの地に住み着いたとされています。釣りや薬売りをして暮らしていましたが、ある時里人に竜宮の話をするうちに玉手箱を開けてしまい、300歳の老人になったと伝えられています。

臨川寺は、その歴史と文化、そして美しい自然景観が調和した、魅力的な寺院です。

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