臨終

臨終とは

臨終とは、人が死を迎える直前の時期を指す言葉で、臨命終時（りんみょうしゅうじ）の略語です。古来より、この危機的な時期を巡って、死の受容と看取りに関する様々な慣習と文化が生まれてきました。

歴史的背景

死を迎えることの意味を説いた古い文献としては、エジプトやチベットの『死者の書』が知られています。しかし、これらの文献は必ずしも臨終時の問題に焦点を当てたものではありませんでした。一方、西ヨーロッパでは中世末期に『往生術』という文献が書かれ、臨終を迎える者のための心得が説かれました。

『往生術』によると、死の床には悪魔が介入し、良心の錯乱や苦しみを引き起こすとされています。しかし、神は死にゆく者に天国を経験させ、罪の償いを約束することで、このような誘惑に対抗するとされています。また、臨終者の看取り手は、回復の幻想を与えるのではなく、死を自然に受け入れられるよう手助けすべきだと説かれています。

仏教における臨終

インドの仏教では、祇園精舎に無常院を作り、病者や死を迎える者を入れていました。中国の唐代には、道宣がインドの伝承に基づいて『四分律行事鈔』を選述し、臨終の際の看病について論じました。その内容は、仏像に五色の布をかけ、それを病人に持たせて往生を願わせるというものでした。また、善導の『観念法門』には、病人と看病人の関係について述べられ、臨終の場面では、病人の苦しみや喜びの状態を記録し、喜びの状態のまま死を迎えられるよう、共に念仏を唱えて助けるべきだと説いています。

日本では、平安時代中期の源信が、道宣と善導の臨終論を受け止め、『往生要集』で臨終時の念仏の心得を説き、後世に大きな影響を与えました。中世には、往生伝や来迎図が制作され、臨終の作法が定着しました。

臨終の相

仏典には、臨終の相について様々な記述があります。『守護国界主陀羅尼経』には、地獄、餓鬼、畜生に堕ちる際の相が説かれています。例えば、地獄に堕ちる相としては、家族を悪眼で見つめたり、虚空を探ったり、悲号啼泣したりする様子が挙げられています。また、『大智度論』や『摩訶止観』には、色が黒い者は地獄に堕ちるとされています。

日蓮は、これらの仏典を根拠に、臨終の相を重要視し、現世の善悪の総決算であるとしました。そして、死相の良い者は成仏し、悪い者は地獄に堕ちると説きました。ただし、日蓮は他宗の行者が善相を示しても地獄に堕ちるとも主張しました。

断末摩

断末摩（だんまつま）とは、死ぬ間際の苦しみを表す仏教語です。末摩とは、体にいくつかある急所のことで、これを断つと激しい痛みと共に死に至るとされています。近年では、断末摩を「呻き」や「叫び声」の意味で使うことがありますが、これは誤用です。

関連項目

横難横死
死相
死ぬ瞬間
臨終婚
お迎え現象
臨終の苦しみ（Agonie）

もう一度検索