自噴

自噴とは

自噴（じふん）とは、石油、温泉、地下水などが、人為的な動力を用いることなく、自然に地下から地表へ湧き出す現象を指します。単に湧水や泉だけでなく、井戸から自然に湧き出す場合も自噴と呼びます。

自噴のメカニズム

自噴は、特定の地質構造条件下で発生します。地下の帯水層の上に、水を通しにくい地層（加圧層）が重なっている場合、帯水層内の水圧が地表面よりも高いと、帯水層まで続く穴（井戸など）を通じて地下水が自然に湧き出します。

また、地下水や温泉に溶け込んでいるガスが、井戸内の水圧低下によって気化し、そのガスが地表へ噴出することで、地下水や温泉の自噴現象が起こることもあります。

ただし、崖の近くなど地下水の流出域では、被圧地下水でなくても、地形と地下水位の関係で地下水が泉となって自噴することがあります。したがって、自噴しているからといって、必ずしも被圧地下水が湧き出ているとは限りません。

自噴井と自噴泉

自噴には、井戸から湧き出す自噴井と、自然に地下水が湧き出す自噴泉の2種類があります。

自噴井

自噴井（flowing well, flowing artesian well）とは、地下水が人為的な動力なしに地表まで自然に噴出する井戸のことです。被圧地下水による自噴井が集中している地域を特に鑚井盆地（さんせいぼんち、アーテジアン・ベイスン、Artesian Basin）と呼びます。

自噴泉

自噴泉とは、井戸のような人工的な構造物ではなく、地下水や温泉が自然に地表に湧き出している場所を指します。一般的に「泉」と呼ばれるものは、この自噴泉を指すことが多いです。自噴泉とは対照的に、ポンプなどで人工的に地下水を汲み上げる泉を動力泉と呼びます。

日本と世界の自噴帯

日本では、扇状地や火山山麓を含む新第三紀以降の地層からなる被圧盆地に多くの自噴帯が存在します。中でも、濃尾平野（岐阜県）の大垣自噴帯が有名です。大垣自噴帯は、木曽川、長良川、揖斐川の三大河川によって形成された氾濫平野であり、豊富な地下水が蓄えられています。

世界的に有名な自噴帯としては、「自噴」の語源となったフランス北西部のアルトワ地域が挙げられます。その他、オーストラリアのグレートアーテジアン盆地（大鑚井盆地）も大規模な被圧地下水盆として知られています。また、クウェートのブルガン油田は、石油の自噴帯として有名です。

参考情報

山本荘毅編,「地下水学用語辞典」（1986）,古今書院
地学団体研究会新版地学事典編集委員会編,「新版　地学事典」（1996）,平凡社

関連項目

帯水層
被圧地下水
井戸

外部リンク

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