自治体衛星通信機構

一般財団法人自治体衛星通信機構（LASCOM）について

一般財団法人自治体衛星通信機構（LASCOM）は、地方公共団体が共同で出資し設立された、電気通信事業者です。地域衛星通信ネットワーク（LASCOMネット）の構築・運営を主軸に、防災・行政情報の伝送サービスを提供しています。総務省の所管であった時代を経て、現在は一般財団法人として活動しています。

設立の背景と目的

1990年（平成2年）2月、全国の地方公共団体の出資により設立されました。通信衛星を利用した防災情報・行政情報伝送システムの整備と管理・運営を目的としています。地域衛星通信ネットワーク（LASCOMネット）は、地方公共団体や防災関係機関にとって、重要な情報インフラとなっています。

沿革

1990年（平成2年）2月：自治大臣及び郵政大臣より設立認可
1991年（平成3年）
10月：山口管制局・東京局（東京消防庁内）が完成
12月：地域衛星通信ネットワーク（第1世代システム）運用開始（DAMA・PAMA方式）
1992年（平成4年）12月：美唄管制局が完成
1999年（平成11年）3月：東京局を都道府県会館に移転
2000年（平成12年）秋頃：使用衛星をSUPERBIRD B1からSUPERBIRD B2に変更
2003年（平成15年）
4月：第2世代システム運用開始（SCPC方式）
11月：総務大臣より公的個人認証サービス制度における指定認証機関に指定
2004年（平成16年）1月：公的個人認証サービスセンター運用開始
2006年（平成18年）4月：地球局免許人となる
2007年（平成19年）2月：全国瞬時警報システム（J-ALERT）運用開始
2010年（平成22年）12月20日：全国瞬時警報システムの地上配信業務を終了（衛星配信は継続）
2011年（平成23年）3月：事業仕分け（行政刷新会議）第2弾において、仕分け対象枠の公益法人に選定。東日本大震災で緊急時通信の機能を発揮
2013年（平成25年）
5月：マイナンバー関連法が国会で成立
10月：山口・美唄管制局の設備更新（～平成27年度）
2014年（平成26年）
3月：内閣総理大臣により一般財団法人移行認可
4月：一般財団法人へ移行
10月：「有識者会議」設置
2016年（平成28年）
7月：「地域衛星通信ネットワーク担当課長会」設立
12月：使用衛星をSUPERBIRD B2よりJCSAT-16に変更
2018年（平成30年）7月：使用衛星をSUPERBIRD B3に変更
2019年（平成31年）4月：第3世代システム（映像伝送サービス）運用開始（TDMA方式）
2021年（令和3年）9月：本部を都道府県会館に移転
2025年度（令和7年度）：第2世代システムの運用終了（予定）

地域衛星通信ネットワーク（LASCOMネット）

LASCOMネットは、通信衛星SUPERBIRD B3のKuバンドを利用し、地方自治体向けに映像伝送、音声通信（電話、FAX、一斉指令）、データ通信等のサービスを提供しています。1991年12月に運用を開始して以来、防災行政無線や消防防災無線の衛星通信系として、全国の地方公共団体、消防機関、防災関係機関を独自の衛星電話網で結んでいます。

特に災害時においては、電話回線や有線通信回線が途絶した場合、衛星電話が重要な非常通信手段となります。東日本大震災においても、その有効性が実証されました。また、停電時でも使用できるよう、冊子状の「衛星電話番号簿」を発行するほか、ウェブサイトでも公開し、災害時の混乱に備えています。

ネットワークの活用

LASCOMネットは、総合行政ネットワーク（LGWAN）や住民基本台帳ネットワークの衛星通信系としても利用されています。特に、全国瞬時警報システム（J-ALERT）の伝送回線としても活用されており、国民への迅速な情報伝達に貢献しています。

ディジタル映像伝送用のチャンネルは5つあり、平日には情報番組が配信されています。全国知事会や全国市長会議などの会議中継、防災訓練、自治体向け説明会、国会中継など、地方自治体に関わる情報を広く伝えています。これらの番組は、専用チューナーで受信可能です。一部の番組は再送信も可能で、ケーブルテレビや機構のホームページで一般視聴もできます。

人工衛星局と衛星地球局

LASCOMは、スカパーJSATのSUPERBIRD B3の中継器を3本借り上げています。帯域は状況に応じて柔軟に割り当てることができ、東日本大震災では個別通信の帯域を増強し、通信需要の急増に対応しました。過去にはSUPERBIRD B1、SUPERBIRD B2を使用しており、一時的にJCSAT-16を使用したこともあります。

主な衛星地球局

東京局：東京都千代田区平河町 都道府県会館内
山口管制局（主管制局）：山口県山口市宮野上
美唄管制局（副管制局）：北海道美唄市茶志内町 美唄ハイテクセンター内
第3世代システム集約局 主局：神奈川県横浜市緑区 スカパーJSAT横浜衛星管制センター内
第3世代システム集約局 副局：山口県山口市 スカパーJSATスーパーバード山口ネットワーク管制センター内


管制局は、通信衛星を管理する場所ではなく、防災通報網の拠点・送信所です。また、政府や地方自治体、防災関連機関の施設に約5,500の地球局が設置されており、地上回線が途絶した場合でも緊急通報が可能な体制が整備されています。

利用料金と使用例

直通通信、パケット型データ伝送、帯域保証型データ伝送、予約系IP型データ伝送以外の利用は無料です。ただし、山口管制局の設備利用料や、東京局を使用する場合は別途利用料が必要です。

使用例

LASCOMネットは、非常時はもちろん、地方自治・防災を目的とした日常業務にも活用されています。

日常業務の事務連絡
消防車・救急車の車載衛星電話回線
水門遠隔制御システムの通信回線
防災訓練の映像伝送
消防防災ヘリコプターの映像伝送（ヘリサット）
地域のイベントや観光情報の映像配信
総合行政ネットワーク（LGWAN）のバックアップ回線
全国瞬時警報システム（J-ALERT）の受信
住民基本台帳ネットワークのバックアップ回線
地方自治体の業務用通信回線のバックアップ回線
都道府県防災行政無線のバックアップ回線
公的個人認証局（現在は地方公共団体情報システム機構に移管）

まとめ

一般財団法人自治体衛星通信機構（LASCOM）は、地方公共団体にとって必要不可欠な通信インフラを提供しています。災害に強い情報伝達ネットワークとして、今後もその役割を担い続けます。

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