自治基本条例

自治基本条例

自治基本条例（じちきほんじょうれい）は、地方自治体がその運営の基本原則を住民自治に基づいて定めるために制定する条例です。しばしば「自治体の憲法」と形容されることもあります。

概要

この条例は、地域が抱える様々な課題に対応し、より良いまちづくりを進める上で、誰がどのような役割を担い、どのような手続きを経て意思決定を行うかを定めた、自治体運営の根幹をなすルールと言えます。地域社会の仕組みにおける基本的な枠組みを文章化したものです。

多くの自治体で制定されている自治基本条例には、情報共有、市民参加、市民と行政の協働といった、自治の基本的な原則が盛り込まれています。また、自治の主役である住民、そして首長や行政機関それぞれの役割と責任を明確にするとともに、情報公開制度、各種計画策定や審議会への市民参加、さらには住民投票といった、自治を推進するための具体的な制度についても規定しています。

自治基本条例を制定することの意義としては、以下のような点が挙げられます。

1. 自治体の将来像の明示: 将来にわたって目指すべき自治体のあり方を普遍的な形で示すことができます。
2. 住民の自治意識向上: 条例の制定過程やその後の運用において住民の積極的な参画が求められるため、住民自身の地域に対する関心や自治への意識を高める効果が期待できます。
3. 施策体系の整備: 個別の条例や自治体が進める様々な施策が、自治基本条例に定められた原則に基づき、体系的に整備されることを促進します。

歴史

自治基本条例の源流は、1997年（平成9年）に施行された大阪府箕面市の「まちづくり理念条例」にあるとされています。全国で初めて「自治基本条例」として制定されたのは、2000年（平成12年）12月に北海道ニセコ町で、当時の逢坂誠二町長の下で成立した「ニセコ町まちづくり基本条例」です。この条例は翌2001年（平成13年）4月に施行されました。その後、このニセコ町の例を皮切りに、自治基本条例を制定する自治体が急速に増加しました。現在でも、多くの自治体がその制定に向けた検討を進めています。

内容

自治基本条例に盛り込まれる内容は自治体によって異なりますが、概ね以下のような項目が含まれることが多いです。

まちづくり（自治体運営）の基本的な方針や目指すべき将来像
住民の権利（地域での生活に関わる権利、自治体運営への参加権、情報公開を求める権利など）
自治体（首長、議会、職員）が負うべき義務や責任
住民や地域内で活動する事業者の責務
住民が自治体運営に参加するための手続きや仕組み
住民投票に関する規定
市民活動団体（NPO等）との連携や支援、市民協働の仕組み
特定の分野における施策の基本的な方向性
自治体内の他の条例や規則との関係性（自治基本条例が最高規範であるとする規定など）
条例の改正や見直しに関する手続き

なお、条例の名称も自治体によって様々であり、「まちづくり条例」「まちづくり基本条例」をはじめ、「行政基本条例」「市民基本条例」などと呼ばれることもあります。

評価と議論

自治基本条例に対しては、様々な評価や議論が存在します。

特に、条例が自治の主体を「市民」と定義する際に、地方自治法上の選挙権を有する者だけでなく、外国籍の住民などにもその範囲を広げている点について、法的な整合性に関する批判があります。住民投票条例を自治基本条例と併せて制定している自治体の中には、投票資格者を広く規定している事例があり、これに対しては永住外国人への地方参政権問題と同様に、慎重な議論が必要であるという意見も出されています。

一方で、この条例の制定や普及を積極的に推進している組織としては、全日本自治団体労働組合や社会民主党などが挙げられます。

関連項目

議会基本条例
外国人参政権
* 住民投票条例

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