自然失業率

自然失業率について

自然失業率は、労働市場における長期的な均衡状態を示す指標であり、賃金の調整やインフレの安定化が達成されるときに存在します。この概念は1968年に経済学者ミルトン・フリードマンにより提唱され、その後、エドモンド・フェルプスも独自の見解を展開しました。

自然失業率の定義

自然失業率とは、経済全般において人々の賃金に対する期待やインフレ率が均衡し、雇用の需給が労働市場のメカニズムによって調整される状態での失業率を指します。短期的には、政策がインフレを促進することにより、失業率が一時的に低下することがあります。この現象はフィリップス曲線で表現されており、企業は名目賃金を高めることで実質賃金を維持しようとし、労働者は高賃金を実質的な収入の増加と錯覚するためです。

しかし、長期的には労働者がインフレを予測し、名目賃金を要求することで実質賃金の変動がなくなり、最終的に失業率は自然失業率に収束します。したがって、長期的なインフレがあっても失業率は自然失業率によって決まるため、関連するトレードオフは存在しません。

NAIRUとの関連

自然失業率は、NAIRU（インフレ非加速的失業率）と密接に関連しています。NAIRUは、インフレを安定させるための失業率の閾値を指し、自然失業率とは異なり、具体的な数値が求められる実用的な面が強調されます。つまり、失業率がNAIRUを下回るとインフレが加速し、恐らくこの状態で完全雇用が達成されることになります。

自然失業率の変動要因

自然失業率は、経済の構造変化、就労意識の変化、規制や税制の改革など、様々な要因によって影響を受けます。また、長期失業者が増えることで、再就職が難しくなる現象があり、これが自然失業率の上昇に寄与します。特に金融危機のような大規模な経済ショックが発生した場合、長期失業者が増加し、循環的失業が構造的失業に変わることで、自然失業率が上昇することがあります。これを「ヒステリシス」と呼び、経済を不安定化させる要因となり得ます。

景気の急激な後退が長引くと、雇用の回復が難しくなり、結果的に自然失業率が恒常的に上昇する可能性があります。これに対処するためには、企業や政府による迅速かつ効果的な経済刺激策が求められます。

インフレ率との関係

研究によると、インフレ率が非常に低い状況やデフレが続く状況では、自然失業率が高まる傾向があります。これは、名目賃金の硬直性が実質賃金の調整を難しくするためです。また、失業の履歴効果が影響し、失業の固定化や構造化が行われることがあるため、自然失業率をより難解にします。

さらに、低い平均インフレと高い平均インフレの両方が自然失業率の上昇をもたらすことが明らかになり、特定のインフレ率での自然失業率を維持することの重要性が示されました。このため、マクロ経済を評価する際には、単に自然失業率やアウトプットギャップのような数値に偏るのではなく、多様な要因を総合的に考慮する必要があります。

結論

自然失業率は、経済状況を把握する上で重要な指標であり、インフレとの相互関係、労働市場の動向を深く理解することで、より効果的な経済政策を検討する手助けとなります。

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