完全雇用

完全雇用の概念とその実態

完全雇用（かんぜんこよう、Full Employment）とは、マクロ経済学において、ある経済が非自発的な失業を抱えていない状態を指します。ただし、これは失業率が0%ということを意味しません。完全雇用では、一定の摩擦的失業や不完全[[雇用]]が存在するため、「失業者が一人もいない」という状態ではなく、自発的な失業が許容される場合があります。特に、新古典派経済学の観点においては自発的失業の存在が認められており、ケインズ経済学では有効需要の不足から生じる非自発的失業も考慮されています。このように、完全雇用の概念は経済の運用において重要な位置を占めています。

完全雇用GDPの理解

完全雇用GDPまたは潜在産出量とは、現在の経済構造下で資本と労働力が最大限に活用されているときに達成可能とされるGDPです。しかし、その推計方法にはさまざまな課題が存在し、経済の実態を把握するのが容易ではありません。国際連合憲章や国際労働機関（ILO）でも、完全雇用の実現が経済的かつ社会的な進展の条件として強調されています。

失業率と完全雇用

完全雇用を評価する手法の一つとして、失業率が挙げられます。20世紀の英国経済学者、ウィリアム・ベヴァリッジは、3%の失業率を完全雇用と見なしましたが、他の経済学者の見解は国や時代によって異なります。一般的には、2%から7%の範囲が見込まれています。例えば、OECDによると、1999年のアメリカでは完全雇用失業率が4%から6.4%の間とされ、日本は4.0%プラスマイナス0.3%と推定されています。

インフレーションの観点

1968年、マネタリストのミルトン・フリードマンは失業率の新しい概念を提唱しました。この自然失業率は、政策担当者が追求するべき目標ではなく、まずはインフレ率を安定させることが重要であると指摘しています。安定したインフレ率の維持ができれば、失業率は徐々に自然失業率に近づくと考えられます。フリードマンの理論は、経済が持続可能な範囲内で自然失業率を達成し、インフレを管理する必要性を示しています。

理想的な失業率と現実

経済学者たちは、完全雇用においては構造的失業が存在しない「理想的失業率」という概念を持っています。ベヴァリッジは、求職者と求人数が等しい状態を完全雇用と定義し、経済が最大の生産を達成するためには、雇用がそれ以上であることが望ましいと述べています。

現在の経済状況

1990年代末のアメリカでは、NAIRUと推定される失業率を下回っていたにもかかわらず、インフレ率が安定していました。また、日本は高度経済成長期やバブル景気においてほぼ完全雇用であったとされます。一方、近年の欧州では物価上昇が低い中で高い失業率が続いており、社会問題が深刻化しています。このように完全雇用は単なる失業率の問題ではなく、経済全体の健全性とも密接に関わっているのです。

未解決の課題が多い完全雇用の概念は、経済政策やグローバルな経済動向とともに進化し続けています。

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