自由と民主主義の宣言

日本共産党が1976年 7月30日の第13回臨時大会で採択した「自由と民主主義の宣言」は、党の根幹となる方針を形成する重要な文書です。この文書は、自由（自由権）と民主主義の擁護・発展を目指すものであり、日本共産党の政策や政治路線を指し示す「準綱領的文書」と位置付けられています。宣言は、1980年代にはその重要性が低下しましたが、東欧での社会主義政権崩壊を受けて再評価され、1996年に一部改訂されました。

概要

自由と民主主義の宣言では、国民にとっての最も重要な自由を「生存の自由」「政治的市民的自由」「民族の自由」の3つに分類し、現状ではこれらの自由が脅かされていると指摘しています。また、日本共産党と共産主義者が歴史的にこれらの自由を擁護してきたことを強調しています。さらに、「科学的社会主義」において自由と民主主義がどのように扱われてきたかについても言及し、ソビエト連邦などの出来事がその逸脱とされることを示しています。このような考察を踏まえて、日本共産党は民主主義革命と社会主義・共産主義の段階において、これらの自由を守り、発展させると宣言しています。

宣言の中で特に目を引くのは、「自由と民主主義の確立と発展・開花をめざして」という節です。この節では、国民の自由や人権について次のような内容が記されています。生存の自由および私有財産権の擁護、市場経済の活用、政治的市民的自由の守護、普通選挙の導入、政権交代制の実現、三権分立や司法の独立の確保などが挙げられています。

さらには、思想・良心の自由、言論の自由、結社の自由、集会の自由、表現の自由、信教の自由、労働基本権といった国民の権利も明確にされています。この権利には学問の自由や文化・芸術活動の自由、男女同権、プライバシー権、身体的自由権などが含まれています。また、民族の自由の重要性も強調されています。

しかし、宣言は大企業による経済支配や対米従属が国民の生存の自由を脅かしていると指摘し、民主連合政府による国政の革新を提唱します。その基盤として国民本位の経済民主主義を掲げ、大企業に対して民主的な規制を求めています。さらに、社会主義的な段階においては、大企業の手中にある生産手段は社会全体の所有に移されるべきであるとも述べています。

背景

1970年代初頭、日本は高度経済成長期から生じた公害問題や市民運動が盛り上がりを見せていました。この時期、左派勢力が伸展し、日本共産党やかつての日本社会党が支持を集め、革新自治体が誕生しました。社共共闘や革新統一の動きも進み、民主連合政府の構想が現れました。一方で、自民党や財界は「自由社会を守れキャンペーン」を展開し、共産主義や左派勢力への反発を強め、その動きを削ぐことに取り組みました。この文書は、こうした反発に対抗するために作成され、民主連合政府の樹立を目指す日本共産党の政治路線を明確にするものとなったのです。ここでも、「路線転換」ではなく、61年綱領以来の路線の総決算として位置付けられています。

日本共産党の立場

日本共産党は、従来のマルクス主義の枠を超え、近代民主主義を「ブルジョア民主主義」とはみなさず、その価値を重視しています。この考え方をもって、日本共産党は近代民主主義の擁護者であると自負し、その発展と継承を強調しています。これにより自由と民主主義の重要性を再認識する流れを生み出しました。日本共産党が自由と民主主義の確立を目指す動きは、今後も注目されることでしょう。

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