自画像 (ラファエロ)

ラファエロ・サンティの『自画像』

『自画像』（英：Self Portrait）は、ルネサンス期のイタリアの巨匠ラファエロ・サンティによって約1506年に制作された絵画です。この作品は、テンペラ画として知られており、ウルビーノ公爵のコレクションを起源としており、その後メディチ家にも受け継がれました。具体的な制作背景については詳細が不明ですが、ラファエロのフィレンツェ時代の初期にあたります。この時期、彼は何度か地元ウルビーノに帰郷しており、彼の親族や宮廷の重要人物への奉納が目的された可能性があります。

作品の特徴

作品には長い栗毛の髪と深い瞳を持つ青年が描かれています。青年は4分の3正面から描かれており、暗い色のベレー帽とローブを身にまとっています。その下には、しわの寄った白いシャツが見えかくれしています。この髪型と衣装は、当時のルネサンス期における宮廷の小姓の典型であり、暗い衣装は画家たちが普段着ていた作業服に相当します。青年はこの服装を通じて、自らが画家であることをほのめかしています。

特に、ラファエロの青年期の自画像は、ローマ教皇ユリウス2世の委託によって制作されたヴァチカン宮殿のフレスコ画『アテナイの学堂』の自画像に類似しています。ラファエロ自身がその作品では古代ギリシャの画家アペレスを象る姿で描かれています。この2つの肖像画は、異なる技法（テンペラとフレスコ）であるにもかかわらず、類似の特徴を持っており、ラファエロ本人の自画像と認識されています。ただし、その制作者については議論の余地があります。

1983年には、ラファエロ生誕500周年を祝う展覧会に伴い、科学的な調査が行われました。赤外線リフレクトグラフィーによって、作品の下層には若いラファエロの肖像画があることが確認され、また画家は光沢のある釉薬で背景を施す技術を用いていました。この技術は同時代のフランドル絵画にも見られ、ラファエロが北方ルネサンスの画家に影響を受けていたことを示しています。

来歴

この作品の最も古い記録は1631年にウルビーノからフィレンツェへの出品に関する文書にあります。この文書ではラファエロの自画像として言及されています。その後、ウルビーノ公爵家のヴィットーリア・デッラ・ローヴェレが、従兄弟フェルディナンド2世・デ・メディチとの結婚に際して自画像を持参金としてフィレンツェに持ち込んだとされます。以降、絵画は枢機卿レオポルド・デ・メディチのコレクションに加わり、その詳細な経緯は不明ですが、購入された際の状況への様々な仮説が存在します。

新たな発見と考察

近年、ラファエロに帰属される別の肖像画が注目され、さらに多くの研究が行われました。これは元々リッチス家の所有物で、1885年にその存在が初めて知られました。1984年には他の美術史家たちと共にラファエロの可能性が議論され、興味が再燃しました。この作品の展示が計画されていたものの、具体的実現には至りませんでした。

文化的影響

ラファエロの『自画像』は、2002年のユーロ導入以前のイタリアで、優れた美術作品のひとつとして評価され、1997年から2001年にかけて発行された50万リラ紙幣にも描かれました。この紙幣はイタリアの歴史的な美術を象徴するもので、非常に高額なものとして記憶されています。

このように、『自画像』はラファエロの芸術的な才能を表す重要な作品であり、長い歴史と多くの文脈を持っています。彼の作品は今もなお、多くの人々に感動を与え、学び続けられています。

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