臭化ナトリウム

臭化ナトリウムについて

臭化ナトリウム（しゅうかナトリウム、英語: sodium bromide）は、ナトリウムの臭化物であり、ハロゲン化ナトリウムの一種です。化学式はNaBrで、ナトリウムイオン（Na⁺）と臭化物イオン（Br⁻）から構成されるイオン結晶として存在しています。特長的な塩化ナトリウム型の構造を持ち、格子定数は596.1ピコメートルです。物理的には、融点は755℃、沸点は1390℃であり、比重は3.21です。また、水に対する溶解度は、20℃で73.3g/100ml、50℃では116g/100mlに達します。さらに、水溶液をさらなる濃縮を行うと、2水和物が析出します。

歴史的背景

臭化ナトリウムは19世紀の後半から20世紀の初頭にかけて、主に鎮静剤および抗てんかん薬として多く用いられていました。その薬理作用により、神経系に関する治療において重要な役割を果たしていましたが、現代ではより効果的な薬剤が現れたため、使用頻度は減少しています。

化学反応

臭素の生成

臭化ナトリウムの水溶液に、酸化還元電位が高く、強い酸化作用を持つ気体塩素（Cl₂）を通すと、臭素（Br₂）が生成されます。この反応は、次のように表現されます。

$$
2 ext{NaBr} + ext{Cl}_2
ightarrow 2 ext{NaCl} + ext{Br}_2
$$

この反応は、酸化還元反応の一例であり、塩素が臭化ナトリウムの水溶液と反応することで、ナトリウムの塩化物が生成され、同時に臭素が放出されます。

揮発性の臭化水素の生成

臭化ナトリウムと強酸を混合することで、揮発性の臭化水素（HBr）が生成されます。この反応は、酸性度の高い濃硫酸を使用することで進行しやすくなりますが、生成した臭化水素の酸化を抑制するためにはリン酸（H₃PO₄）が用いられることが一般的です。反応式は以下の通りです。

$$
ext{NaBr} + ext{H}_3 ext{PO}_4
ightarrow ext{HBr} + ext{NaH}_2 ext{PO}_4
$$

有機化合物の合成

さらに、臭化ナトリウムは、有機合成において非常に重要な役割を果たしています。特に、有機塩素化合物を有機臭素化合物に転化させる求核剤として広く使用されます。この反応は次のような形式で表されます。

$$
ext{NaBr} + ext{RCl}
ightarrow ext{RBr} + ext{NaCl}
$$

ここで、Rは有機基を示しており、この反応によって目的の有機臭素化合物が得られます。

参考文献

臭化ナトリウムは、化学的な特性や反応性から、さまざまな分野での利用が期待されている化合物です。有機合成や医療の分野においても、その特性を活かして新たな応用が進められています。

関連項目

• - 塩化ナトリウム（NaCl）

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