臼田金太郎

臼田 金太郎

臼田 金太郎（うすだ きんたろう、1906年9月25日 - 1980年5月27日）は、日本のボクシング選手、指導者。戦前のアマチュア、プロの両方で活躍し、日本ボクシング界の基礎を築いた草分けの一人として知られています。東京都大田区の出身で、東京植民貿易語学校および明治大学で学びました。

来歴

黎明期のボクシングとの出会い

東京植民貿易語学校に在学していた頃は、当初相撲選手として活動していました。しかし、やがてボクシングへと転向し、1923年1月8日には日本拳闘倶楽部（通称：日倶）の門を叩きます。

同年9月1日に発生した関東大震災では、日倶の施設も大きな被害を受け、復興には時間を要しました。この間、臼田は自宅の庭にリングを設けて練習を継続するなど、ボクシングへの情熱を持ち続けました。また、震災によって神田から上野公園内の輪王寺へと仮校舎を移していた植民貿易語学校では、1924年2月23日、卒業記念としてその境内で学生ボクシング試合を開催しました。これは日本で初めて開催されたアマチュアボクシングの試合であり、日本のボクシング史において重要な出来事となりました。

プロデビューと大学での貢献

1924年4月23日、明治大学へ進学した臼田は、日比谷音楽堂で行われた日本ライト級王座決定戦に出場しました。日倶の川上清との8回戦を戦い、6ラウンドTKO勝利を収め、わずか18歳にしてプロの初代日本ライト級王者となりました。

大学では、同年11月に鹿毛善光らと共に明治大学にボクシング部を創設しました。これは日本の大学におけるボクシング部の草分けとなり、後の学生ボクシングの発展に大きく寄与することになります。

アマチュアでの成功とオリンピック出場

プロとして活動する一方で、臼田はアマチュアボクシングでも類まれな才能を発揮しました。1928年5月27日には、第2回全日本アマチュア拳闘選手権大会のウェルター級で優勝を果たします。

同年、アムステルダムで開催されたオリンピックにウェルター級の日本代表として出場しました。1回戦、2回戦をいずれも判定で制しましたが、3回戦となる準々決勝で、この大会で銅メダルを獲得するカナダのレイモンド・スマイリーに判定で惜敗しました。オリンピック出場後、臼田は活躍の場を求めて渡米し、プロボクサーとして活動しました。

渡米経験と帰国後の再起

渡米中、1930年7月31日のトミー・コムスキー（アメリカ）との6回戦では、3度のダウンを奪って判定勝ちを収めました。この試合を観戦していた元世界ヘビー級王者ジャック・デンプシーは、臼田のボクシングを高く評価したと言われています。

同年、日本に帰国した臼田は、国際拳の師範を務める傍ら、自らもリングに上がり続けました。その後、所属を大森拳闘倶楽部、国際拳、臼田ジムと移しながら現役を続行しました。

1933年5月23日、両国国技館で行われた日仏対抗戦のウェルター級代表決定トーナメント決勝では、ライオン野口（大日拳）との白熱した8回戦は引き分けに終わりました。この結果、臼田と野口の両者が日本ウェルター級王者に認定されましたが、野口陣営からの抗議により野口の勝利へと変更されました。しかし、主催者からは臼田に優勝トロフィーが授与されるなど、この一戦は語り草となっています。

戦績と功績

プロキャリアを通じて、判明しているだけで46戦を戦い、31勝（7敗7分1EX）という記録を残しています。獲得した主なタイトルは以下の通りです。

第2回全日本アマチュア拳闘選手権大会ウェルター級 優勝
初代日本ライト級王座（戦前）
第2代日本ライト級王座（戦前）
第8代日本ウェルター級王座（戦前）

臼田金太郎は、アマチュアボクシングの黎明期における試合開催や、大学でのボクシング部創設といった教育・普及面での貢献、そしてプロボクサーとしての日本王座獲得やオリンピック出場、渡米経験など、多岐にわたる活動を通じて、戦前日本のボクシング界の発展に多大な功績を残しました。

私生活では、作家・実業家として知られる邱永漢の姉である素娥と結婚しています。

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