興亜院

興亜院に関する詳細

興亜院（こうあいん）は、日本の歴史において重要な国家機関の一つで、昭和13年（1938年）12月16日に設立されました。この機関は、日中戦争の拡大に伴い、中国大陸での占領地域の政治や開発事業を一元的に指揮するために設立されたものであり、当時の第1次近衛内閣によって設置されました。

機関の構成

興亜院のトップは総裁であり、この役職は内閣総理大臣が兼任していました。総裁のもとには、副総裁が4名、総務長官、さらに政務部、経済部、文化部の各部長が配されていました。副総裁は陸軍大臣、海軍大臣、外務大臣、大蔵大臣が兼任していました。それに伴い、興亜院の方針や政策は実質的に軍部の影響を強く受けるものでした。特に、初代長官には陸軍中将の柳川平助が就任し、重要なポストも陸軍出身者が多く占めていました。

興亜院の設立に対しては外務省が強い反対を示しましたが、最終的には満州政策における対満事務局と似た機関として成立しました。その結果、外務省の対中外交に関する権限が縮小され、宇垣一成外相の辞任を引き起こす要因ともなりました。

各部の役割

興亜院は、占領地域において軍政を実施するための機関として機能しました。各地には「連絡部」が設けられ、モンゴル地方や華北、華中、華南などの地域に分かれました。連絡部の設置によって、占領地における行政や情報の伝達がスムーズに行われるようになりました。特に華北連絡部には出張所が設けられ、後に大東亜省の青島総領事館に改編されました。

興亜院の設立により、外務省東亜局の任務は大きく変化しました。外務省は興亜院が主催する各種会合に参加し意見を述べる立場に限定され、権限が著しく制限されました。このような状況の中、興亜院は幅広い政策を策定し、実施する中枢機関となりました。

統合と改編

昭和17年（1942年）11月1日、興亜院は拓務省、対満事務局、外務省の東亜局および南洋局と統合され、ついに大東亜省として生まれ変わりました。興亜院の設立に深く関わった多くの官僚は、後に自民党内で影響力を持ち、特に大平正芳が興亜院の蒙疆連絡部や経済部での勤務経験を背景に内閣総理大臣に上り詰めました。

関係者の影響

大平正芳は、興亜院の経済部において阿片政策を担当していたことがあり、この業績は彼の政治的活動に大きな影響を与えました。また、興亜院での勤務経験を持つ他の閣僚たちも、自民党内で「興亜院内閣」と揶揄されることがありました。これは、その多くが戦争中に興亜院での経験をもち、政策形成に携わっていたためです。

おわりに

興亜院は、戦時中の日本の対中政策や占領政策において、非常に重要な役割を果たした機関でした。なぜなら、この機関が設置されたことで、占領地の政治や経済の管理が一元化され、それにより外務省の権限が相対的に減少したからです。興亜院は1942年に大東亜省に改編され、その後の日本の動向にも影響を及ぼしました。興亜院の歴史は、戦時中の日本の外交戦略を理解する上で不可欠な要素と言えるでしょう。

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